60歳代・70歳代以上の「貯蓄の中身」

次に、総務省統計局の「家計調査」(第8-5表)から、60歳代以上・二人以上世帯の貯蓄事情を見ていきます。

60歳代世帯の「貯蓄と負債」

世帯主の年齢:64.8歳・有業人員:1.43人

■貯蓄:2384万円■

●金融機関:2364万円

通貨性預貯金:669万円(28.1%)
定期性預貯金:852万円(35.7%)
生命保険など:500万円(21.0%)
有価証券:343万円(14.4%)
・株式・株式投資信託:269万円
・貸付信託・金銭信託:12万円
・債券・公社債投資信託:62万円

●金融機関外:20万円

■負債:242万円■
・うち住宅・土地のための負債192万円

■(参考)年間収入:592万円

70歳代以上世帯の「貯蓄と負債」

世帯主の年齢:76.7歳・有業人員:0.67人

■貯蓄: 2259万円■

●金融機関:2250万円

通貨性預貯金:642万円(28.4%)
定期性預貯金:882万円(39.0%)
生命保険など:392万円(17.4%)
有価証券:334万円(14.8%)
・株式・株式投資信託:278万円
・貸付信託・金銭信託:12万円
・債券・公社債投資信託:44万円

●金融機関外:9万円

■負債:86万円■
・うち住宅・土地のための負債:66万円

■(参考)年間収入:441万円

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「60歳代世帯」と「70歳代以上世帯」の貯蓄平均の差は114万円です。

60歳代世帯の世帯主の平均年齢は64.8歳、有業人員は1.43人。現役で就業中の人が一定数含まれていることが考えられます。よって、この2つの世代を単純比較することはできませんが、リタイヤ後も大幅に貯蓄を切り崩すことなく、保有額をキープしている世帯が一定数あることは推測できそうです。

いずれの世帯も預貯金が貯蓄に占める割合は6割以上ですが、ここで「有価証券」に目を向けてみましょう。株式・投資信託などの有価証券は、60歳代・70歳代以降ともに、貯蓄の15%弱を占めています。

実はこの割合は、20歳代で6.1%、30歳代で7.9%、40歳代で9.1% 50歳代13.0%と、おおむね年齢と連動して高くなっているのです。40歳代から50歳代にかけての伸びが一番大きくなっています。

50歳代は教育費や住宅ローンなどの支出が落ち着き、年収のピークを迎える人も多い時期。資産運用に視点を向け、リタイヤ後に向けたお金の準備を始める世帯が増える時期なのかもしれません。

NISAなどの税制優遇制度を活用する方も増えています。とはいえ預貯金以外の「運用性がある金融商品」で資産を増やす意識は、やはりフトコロ事情と比例して高くなる傾向がある、と考えてよさそうです。

年金収入不足を「貯蓄の切り崩し」だけで対応していくのは心もとない……と感じられた方も多いでしょう。次では、シニア世帯の「不労所得事情」について、ちょっと興味深いデータをご紹介します。