百聞は一見にしかず。10年ぶりに中国本土へ出発
日本にいると、中国について「経済成長率が鈍化している」「大気汚染がひどい」「不動産バブルだ」「軍拡が進んでいる」など、どちらかと言えばネガティブな報道が溢れています。爆買いも影を潜め、銀座の訪日外国人もひと頃ほどの賑わいではないような印象があります。
筆者は以前、投資調査のため中国における投資先のビジネス視察に訪れていましたが、この10年ほどはその機会がありませんでした。通りすがりの旅行者に、日本に溢れる報道が本当かを確かめるのは難しいことは百も承知ですが、それでも百聞は一見にしかず。久しぶりに中国に出かけることにしました。
問題は言葉です。筆者の中国語は自分の名前を言える程度です。そこで、長年の知人で中国に駐在経験が長く、現在はシンクタンクで中国の金融情勢を研究しているUさんに同行をお願いし、羽田から飛行機に乗り込みました。
行き先は広州、深圳(セン)、東莞地区。深圳・東莞は改革開放政策で繁栄した一大製造拠点として栄えた町です。筆者も何度か工場見学などをしたことがありますが、昨今は中国の労働コストが上がり、労働集約型の製造業が同地区で衰退しているとも言われます。一方、広州地区はトヨタ、ホンダ、日産が進出する自動車産業のメッカの1つです。
と、能書きを垂れましたが、実際のところは歳末食い倒れツアーです。詰めの甘い旅行記になりますが、お許しください。
羽田 →(空路)→ 広州 →(鉄路)→ 深圳
羽田発の早朝便で空路広州へ。約5時間くらいのフライトですが、あっという間でした。深圳入りは2日目午後。3日目午前に市内を散策し、午後は東莞地区を抜けて広州に戻る駆け足の行程でした。ちなみに、高速鉄道を利用しましたが快適でした。航空機に乗るのと同じような厳しい手荷物検査がありますが、これはかえって安心感につながります。
深圳といえば鄧小平
深圳といえば鄧(トウ)小平が主導した改革開放政策抜きに語ることはできません。某社の現地駐在トップの方にアドバイスをいただき、蓮花山公園の山頂まで片道20分ほどのハイキングをしました。頂上にはご覧の銅像が。地元の人々や観光客が大挙して登り、銅像前で記念撮影をしています。銅像の視線の先はこのような光景です。
もともとは小さい漁村にすぎなかったと言われる街の大発展を感じずにはいられません。うまい場所に銅像を建てたなあと感心することしきりでした。なお、空気はややかすんでいますが、筆者も含めマスクをしている人は皆無でした。大気汚染の問題は、特に冬場に石炭を焚く北部地域で発生しがちだと聞きました。
深圳といえば電気街
かつて香港や深圳を訪問した際、この地区は電子部品の調達という意味で懐が深い地区だと日系企業の駐在の方に聞いたことがあります。
現在でもその伝統は残り、エレクトロニクスに強い街という印象は変わりません。その1つが世界的なドローンメーカーであるDJIが深圳を本拠地としていること、もう1つはその昔の秋葉原電気街に匹敵する電気街が発展していることです。
筆者も小さい頃はプリント基板と半田ごてでラジオなどを作っていました。21世紀の電気街に行かない手はありません。大きなビルがいくつかあるのですが、こちらがそのうちの一棟です。
中に入ってみると、完成品だけでなくあらゆる種類の電子部品が並んでいます。購入層も若い男性だけではなく若い女性も非常に多かったのが印象的です。すべてのフロアを回ってみましたが、特に部品売り場ではひさびさに興奮してしまいました。いま中学生くらいなら、深圳で工作にふけってみたいと思いました。
ちなみに、日系企業の現地駐在トップの方にお聞きすると、スマホが故障したら電気街に持って行けば目の前でアッという間に直してくれるということです。「スマホ修理なら世界一」とおっしゃっていました。
エレクトロニクスの産業集積が深いところまで根を張っているエピソードなのでしょう。深圳、これからも注目が必要な街の1つであることに間違いはありません。
椎名 則夫