景気予想屋は幅広く、株価予想屋は的を絞って経済を見る

景気予想屋の目的は、当然ながら景気そのものを予想することですから、経済指標を幅広く見て、景気の大きな流れを把握しようとします。景気の転換点付近では、景気を回復させる力と悪化させる力が綱引きをする結果として良い経済指標と悪い経済指標が混在しており、綱引きの結果を予想することが重要ですから。

一方で、株価予想屋は株価を予想することが目的ですから、その目的のために必要な経済指標はしっかり見ますが、それ以外の経済指標には興味を示しません。それは、株価が美人投票の世界だからです。

米国の雇用統計が発表されると、株価が大きく動きます。したがって、多くの投資家が雇用統計に注目しています。そのため、株価予想屋は雇用統計に関して詳細な予測を行なって顧客に提示する必要があるわけです。

一方で、景気予想屋から見ると雇用統計と同じくらい重要な鉱工業生産については、投資家たちがほとんど注目していないので、株価予想屋も鉱工業生産については興味を示さないのです。

鉱工業生産が発表されても株価が動かないことが多いので、多くの投資家は鉱工業生産に注目していません。そんな時に株価予想屋が詳細な予測を行なって顧客に提示しても見てもらえません。それなら、その労力を雇用統計の一層詳しい予測に用いるべきなのです。

こうして、雇用統計は皆が注目するから雇用統計発表日には株価が動き、皆がいっそう注目するようになる一方で、鉱工業生産は皆が注目しないので発表日にも株価は動かず、いっそう誰も注目しないようになる、というわけですね。景気予想屋を除いては、ですが(笑)。

景気予想屋は拙速を嫌い、株価予想屋は機動的に見方を変える

景気予想屋は、経済指標をじっくり眺めます。経済指標は振れるので、良い数字や悪い数字が出ても一喜一憂せずに景気の大きな流れを把握するように、と教育されるからです。

一方で、株価予想屋はそんなことをしていたら株価が先に動いてしまい、顧客に叱られてしまいますから、振れる経済指標に一喜一憂します。

景気予想屋は株価予想屋のことを「景気判断が拙速だ」と批判し、株価予想屋は景気予想屋を「景気判断の切り替えが遅すぎる」と批判しているかもしれませんね。