「老後のスタート地点」と聞かれたときにみなさんが思い浮かべる年齢は何歳でしょうか。

この春(2021年4月)、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。さらに来春(2022年4月)からは年金改正法が施行され、老齢年金の受給スタート年齢の上限が、70歳から75歳にまで引き上げられます。

こうした法改正の流れを見る限り、「還暦60歳」は、もはや老後ではない、といった感もありますね。といいつつも、60歳、もしくは60代を境にして仕事や日常生活のテンポが大きく変わる方は多いでしょう。

今回は、総務省統計局が公表する「家計調査報告」の最新版を参考に、定年退職を迎え、年金生活を送る人が多い「60代以上・無職世帯」の貯蓄事情、そして「純貯蓄の推移」について見ていきます。

そもそも「貯蓄」とは?

総務省の家計調査報告(貯蓄・負債編)の「用語の解説」によると、貯蓄とは、

ゆうちょ銀行,郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構,銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金,生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式,債券,投資信託,金銭信託等の有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価,債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と,社内預金,勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいう。

とあります。つまり、「貯蓄額」には、預貯金以外の金融資産も含みます。次では、60歳以上・無職世帯の金融資産の内訳を、「預貯金額」と「預貯金以外」に分けて確認していきます。

60歳以降・無職世帯「貯蓄の内訳」

さいしょに、60歳以上・無職世帯の「預貯金額」からみていきましょう。

総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2020年(令和2年)平均結果-(二人以上の世帯)」第8-10表より、「無職世帯のうち世帯主年齢60歳以上」世帯の平均額を抜粋していきます。

※なお、四捨五入の関係で、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

60歳以上・無職世帯「預貯金の内訳」

60歳以上・無職世帯の預貯金額平均:1543万円

■内訳■

通貨性預金:631万円

  • 普通銀行等:487万円
  • 郵便貯金銀行:144万円

定期性預金:912万円

  • 普通銀行等:676万円
  • 郵便貯金銀行:235万円

いわゆる「普通預金」より「定期預金」に預けている金額が多いですね。

60歳以上・無職世帯:「預貯金以外」の貯蓄の内訳

引き続き、60歳以上・無職世帯の「預貯金以外」の金融資産の内訳をみていきます。

生命保険など:408万円
有価証券:348万円

  • 株式・株式投資信託:283万円
  • 貸付信託・金銭信託:13万円
  • 債券・公社債投資信託:52万円

金融機関外:8万円

預貯金以外に764万円の金融資産があります。その9割を、生命保険(53.4%)、株式・株式投資信託(37.0%)が占めます。