「人生100年時代」の折返し地点ともいえる50代。そろそろリタイヤ後の具体的なプランを描き始める方も多いのではないでしょうか。
そのプランを大きく左右するのが、老後の生活資金ですね。定年退職を控えた50代から、どのように準備していけばよいのでしょうか。
そこで本日は、前職の証券会社で、老後資金の相談を多く受けてきた経験のある私から、50代の「最後の貯め時」を最大限に活かすコツについて、お話しさせていただきます。
老後に必要な金額はいくらなのか
はじめに、多くの方が陥りがちなのが、貯蓄の「手段」から考えてしまうことです。
「手段」とは、どの金融商品で準備していくかということです。そこにばかり目を向けてしまうと、「いくら貯めるか」という本来の目標を見失ってしまいます。
老後の準備を始める前にまず考えたいのは、貯める「手段」ではありません。まず、「老後に必要となる金額は、具体的にどのくらいなのか」ということを考える必要があります。
では、老後生活にいくらの貯蓄が必要なのでしょうか。
みなさんは、2019年に話題となった「老後2000万円問題」を覚えていらっしゃいますか。
「標準的なシニア夫婦世帯が老後の30年を送るためには、公的年金以外に2000万円が必要となる」という内容で世間の注目を集めましたね。
実はその中に、今回テーマのヒントが隠されているのです。
まずは、なぜ「老後2000万円」なのかを紐解いていきましょう。
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」に、この「老後2000万円」の算出根拠として、モデルケース世帯のひと月の収支を試算した結果が示されています。
モデルケース「夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」
このモデルケース世帯の場合、毎月約5万5000円の赤字となりますね。老後が30年続くと仮定すると「5万5000円×12ヶ月×30年=1980万円(≒2000万円)」となります。これが、「2000万円」という金額の理由です。
では、一旦この2000万円が用意できれば、老後生活は十分安心できるといえそうでしょうか。
答えはノーです。次で詳しくその背景に触れていきます。