一方で、最低賃金が低すぎると、力関係的にも情報量的にも雇い主にかなわない労働者たちが、均衡賃金より低い賃金で酷使されることになりかねませんから、最低賃金が均衡賃金を下回らないことも重要なのです。

均衡賃金は景気動向によって変化しますから、それに合わせて柔軟に最低賃金を上げ下げすることが必要なのです。景気が変動してから最低賃金を動かすのではなく、景気変動を予測して先回りして最低賃金を動かすことができれば理想的ですが。

失業のダメージは経済面にとどまらない

失業者が少数しかいないのに、それを減らすためには最低賃金を大幅に引き下げる必要があるかもしれません。企業が「最低賃金にかかわらず雇用を増やすつもりはない」と考えている場合です。

そうした場合には、少数の失業者を救うために多くの労働者の賃金を引き下げるべきではありませんから、最低賃金は引き下げずに失業者には失業手当等を支給することで我慢してもらう、という選択肢もあるかもしれません。

しかし、それでも筆者は最低賃金の小幅引き下げは必要だと考えています。最低賃金をどれくらい下げたら失業者がどれくらい減るのかを予測するのは難しいので、とりあえず小幅に下げてみて、それでも失業者が減らなかったら失業手当を支給する、といった手順が好ましいと考えるからです。