学生の希望就職先や「親が子どもについてほしい職業」としてしばしば上位にランクインする「公務員」。
民間企業と比べて景気の影響を受けにくいことなどもあり、「官公庁勤務であれば安心して定年まで勤められそう」、そんなイメージをお持ちの方は少なくないでしょう。
なかでも、難関ともいえる採用試験をパスした国家公務員は、安定性とエリート性の両方を満たす職業の一つである、と考える人も多そうです。
とはいえ、国家公務員採用試験(総合職)の申込者数は年々減る傾向にあります。2021年度の申込者数は、現行の試験制度になった2012年度以降で最少を更新しているのです。また若年層には「自己都合」による退職も増えています。
「へぇ、意外・・・」と思った方もいらっしゃるでしょう。以前からあったこの傾向が、長期化するコロナ禍でどう動いていくか、注視したいところです。
さて、2021年5月現在、国家公務員の定年は60歳です。先日、この年齢を段階的に65歳まで引き上げる国家公務員法改正案が閣議決定され、政府は今会期中の成立を目指しています。
そこで今回は、国家公務員の退職金事情を眺めていきます。
はじめに「国家公務員とは」
公務員は、大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。
国家公務員・・・立法、司法、行政という国家の運営に関連した業務を行う
地方公務員・・・採用された地域に密着した行政サービスを主に行う
2020年10月人事院の「国家公務員給与の実態」によると、公務員の人数は、国家公務員が約58万6000人、地方公務員が約274万4000人。
このうち人事院の給与勧告の対象となるのは、「給与法の適用を受ける一般職の国家公務員」の約27万8000人です。
では、「国家公務員」の退職金について見ていきます。
「退職金」国家公務員はどのくらいもらっているのか
ひとくちで「国家公務員」といっても、その職種はさまざまです。
ここでは、一般行政事務職員等である行政職俸給表(一)適用者で、「35年以上勤務した場合の退職事由ごとの金額」を見ていきます。内閣人事局が公表する「退職手当の支給状況(令和元年度退職者)」からの抜粋です。
行政職俸給表(一)適用者・勤続年数が35~39年の場合
平均支給額…2206万2000円
〈内訳〉
- 定年…2188万1000円
- 応募認定(※)…2346万6000円
- 自己都合…1782万7000円
- その他…2074万円
行政職俸給表(一)適用者・勤続年数が40年以上の場合
平均支給額…2166万7000円
〈内訳〉
- 定年…2154万円
- 応募認定(※)…2300万6000円
- 自己都合…1988万1000円
- その他…2239万6000円
「行政職俸給表(一)適用者で、35年以上勤務」かつ、退職事由が「定年退職」や「応募認定(※)」の場合は、2000万円以上の退職金を受け取れているようです。
この退職金額を見る限り、国家公務員の退職金事情は安定していると思えた方も少なくないでしょう。
※「応募認定」とは※
「早期退職募集制度」に基づく退職を指します。
早期退職募集制度は、45歳以上(定年が60歳の場合)の職員が対象。職員の年齢別構成の適正化を通じて組織の活力を維持することなどが目的。2013年11月1日から本制度に基づく退職(応募認定退職)が可能となりました。参考:「早期退職募集制度について」内閣人事局