定年前の50代といえば、老後に入るまであと少しという時期です。

子どもの教育資金が一段落ついたご家庭、住宅ローンの返済がまだ続いているご家庭など、50代世帯のお金事情は世帯によってさまざまでしょう。

さて、2019年に話題となった「老後2000万円問題」。これまで他人事ととらえてきた老後のお金について、改めて考え直した方も多いのではないかと思います。

今回は、証券会社で9年間ファイナンシャル・アドバイザーとしてお客様の資産運用に携わってきた私が、定年退職を控えた50代のみなさんの貯蓄事情や「老後のお金」についてお話していきます。

定年前に確認したい「老後資金はいくら必要?」

さいしょに、冒頭でも触れた「老後2000万円問題」について考えていきましょう。

2019年、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」では、夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯をモデルケースとして、老後の生活に必要となるお金が試算されています。

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯「ひと月の収支」

収入(おもに年金):約20万9198円
支出(おもに食費):約26万3718万円

この場合、毎月約5万5000円の赤字が出る計算になりますね。この金額をもとに老後が30年続くと試算すると

「5万5000円×12ヶ月×30年=1980万円」

およそ2000万円が必要となります。これが「老後2000万円」の根拠です。しかし、この試算には落とし穴があります。

実は、この「2000万円」の内訳には、介護費用が含まれていません。また、住居費は1万4000円と、かなり低い金額で設定されています。これは持ち家住まいであることを前提とした金額なのです。老後も賃貸住宅で暮らす場合は、これに上乗せして家賃との差額を準備する必要があります。

年を重ね、自宅のバリアフリー改修や老人ホームへの入居を検討する場合などは、さらにまとまった資金が必要となります。これらも「2000万円」とは別に、ご自身で準備をしておく必要があるのです。

次では、さらに「ゆとりある」老後の生活を送るために、どのくらいお金が必要か、見ていきましょう。