「特別養護老人ホーム」なら年金だけで入居できそう?

先ほどのAさんの場合は、特別養護老人ホームの入居は叶いませんでしたが、特別養護老人ホームは収入に応じて費用負担が軽くなる負担額軽減制度が設けられているため、収入が少ない人でも入居しやすい施設といえます。費用の詳細を見てみましょう。

「特別養護老人ホーム」の費用

特別養護老人ホームは入居一時金が不要です。入居者が払うのは月額利用料だけです。

また、月額利用料は居住費+食費+介護サービス費(介護保険1割負担額)の合計です。収入によって第1段階から第4段階まで分けられ、居住費と食費はそれぞれの段階に応じて負担限度額が設けられています。また居住費は部屋タイプによっても料金が変わってきます。

<居住費と食費の収入段階ごとの負担限度額>の表をごらんください。

※厚生労働省老健局「制度の持続可能性の確保(参考資料)」を元に筆者作成

表中の居住費と食費に介護サービス費(介護保険1割負担額)を加えたものが月額利用料の基本料金となります。介護サービス費は認定を受けた要介護状態によって負担額が変わります。

例として、第4段階(市町村民税課税世帯)の要介護3の利用者がユニット型個室に入居した場合の月額費用は以下になります。

(居住費:6万180円)+(食費:4万1760円)+(要介護3介護保険1割負担額:2万3,790円)=12万5730円

この金額が多いと感じる場合は、部屋タイプを変更するともう少し金額を下げることができます。仮に従来型個室にした場合には以下になります。

(居住費:3万5130円)+(食費:4万1760円)+(要介護3介護保険1割負担額:2万1360円)=9万8250円

※厚生労働省「令和3年度介護報酬改定について」参照

介護サービス費は、介護保険対象外サービスや上乗せ介護費、サービス加算などがあり、利用の仕方によってはさらにかかります。また、日用品費や娯楽費なども別途必要となるので、費用は多めに想定しておきましょう。

仮に月額12万円と想定してみて、年金だけでやりくりできるでしょうか。公的年金の平均月額を見てみると、厚生年金は約14万6000円、国民年金は約5万6000円となっています(※厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年度))。

国民年金のみの場合は、利用者負担段階は第2段階となるので、月額は5万円以内に収まります。余裕はありませんが、年金だけで入居することは不可能ではないといえます。

ただし、現実問題として、費用が安いということもあって希望者が多く、入居は難しくなっています。また、施設側が受け入れ対象を設定しているため、利用者が自由に施設を選べないというデメリットもあります。