子供に名前を付ける際、いわゆる「キラキラネーム」にならないように…と配慮する人は少なくありません。また、最近では「しわしわネーム」と呼ばれる、いわゆる古風すぎる名前も敬遠されるようになっています。

しかしその一方で、あえてキラキラネームやしわしわネームを子供に付けたという親も。世間から非難の目を向けられるのは百も承知のはずなのに、なぜ彼らは子供に、「その名前」を選んだのでしょうか?

世界に目を向けて欲しい

30代のAさん夫婦は「海外でも通用するように」と、我が子にギリシャ神話の登場人物由来の名前を付けました。

名前に使用する漢字は当て字。奥様は「一応漢字の意味もしっかりと調べて、良い意味の漢字のみを使用しています」と説明してくれましたが、スムーズに読むことができた人は、今のところゼロとのこと。

「読み方を伝えると、十中八九、ギョッとされますね。面と向かって『キラキラネームですね』『お子さん、将来苦労しそう』と言われたこともあります」とご主人。

ご本人たちも我が子の名前がキラキラネームにカテゴライズされるのは、じゅうぶん承知なのだそう。ではどうしてあえてその名前にしたのでしょうか。

ご主人が理由を語ってくれました。

「理由は簡単です。我が子には世界で通用する人物になってほしいからです。我が子の名前は、日本ではギョッとされても、海外ではスタンダード。さらに、名前に漢字を使用することで、『日本ではこの名前はこういう漢字を使うんだよ』と、話の種になるでしょう?」

実は奥様は、最初、キラキラネームを付けるのは反対していたそう。

「やっぱり、世間体もあるし、常識がない家族って思われそうな気がして…」

しかし、そんな奥様の考えを覆したのは、とある文豪。その文豪とは…?

「森鴎外です」とご主人。

森鴎外には3男2女の子供がいます。それぞれの名前が
長男:於菟(おっと)
長女:茉莉(まり)
次女:杏奴(あんぬ)
次男:不律(ふりつ)
三男:類(るい)

「森鴎外の本名は森林太郎です。彼はドイツに留学していたとき、自分の『りんたろう』という名前が外国人には、発音しづらいことを知り、子供たちには『外国人でも発音しやすいように』とドイツ語やフランス語で表記できる名前を付けたんです」

ちなみに、鴎外は孫にも真章(まくす)、富(とむ)、爵(じゃく)と命名しています。

奥様は、森鴎外のエピソードをご主人から聞き、「キラキラネームだなんて偏見を持つ方がおかしいのではないかな、と考えるようになって。そうすると、なんだかこの名前しかない、と思うようになったんです」

ご主人はさらにこう語ってくれました。

「きっと名前の由来や私たちの名前に対する思いを知ったら、我が子も自分の名前に誇りを持ってくれるはず。『君の名前は世界一の素敵な名前なんだよ』と、私たちも折に触れ伝えようと思っています」

シンプルで日本人らしい名前をつけてあげたかった

続いてお話を伺ったのは、Bさん夫婦。ともに30代のおふたりの間には、3歳の男の子と1歳の女の子がいます。

Bさん夫婦の子供の名前へのこだわりは、「日本人らしいこと。そして、シンプルなこと」。その結果、まれに周りの人から「古風な名前だね」「うちの祖母と同じ名前だわ」などと言われることもあるそうです。

「確かに、最近の子供の名前の傾向とは真逆を行っているな、とは思いますよ。でも、誰にでも読める、由来がわかりやすい名前の方が絶対いいと思うんです」とご主人。現に、年配の方からは「最近は漢字を見ても読めない名前が多いけれど、この子の名前はわかりやすくていいねぇ」と好評なんだとか。

奥様はこう語ります。

「だいたい、親が一生懸命我が子に付けた名前に、外野が『キラキラネーム』だの『しわしわネーム』だの、文句をつけるなんて、大きなお世話だと思いますよ。どの名前だって、親から子供へのプレゼント。周りがとやかく言う問題じゃないんです。しわしわネーム上等ですよ。この子たちには、この名前以外考えられませんから」

おわりに

キラキラネームにしろ、しわしわネームにしろ、親が子供の幸せを考えて付けた名前には違いありません。また、名付けに正解はない、というのも事実。

ただし、その名前を背負って生きていくのは、他でもない名前を付けられた子供たち。思い入れが強すぎるばかりに、親の独りよがりになっていないか…冷静になって考えることも必要なのではないか、と筆者は思います。

大中 千景