暖かい心が解決策を探る

もっとも、それでは筆者の暖かい心が納得しません。何とか解決策を探ろうとして「貧しい人々を救うという目的は全く正しい。しかし、製薬会社に犠牲を払わせるという方法は冷たい頭脳が許してくれそうもない。それなら、先進国政府が製薬会社に巨額の費用を支払って特許権を買い取れば良いだろう」と考えています。

先進国の国民は、「途上国の人は助けたいけれども自分たちの税金を使うのは嫌だ。だから製薬会社に犠牲を強いるべきだ」と考えているのでしょうか。そうだとすれば、それには賛同し難いですね。製薬会社の権利を不当に侵害するもので、許されないでしょう。

あとは、誰が費用を負担するのか、という問題ですね。寄付を募ったのでは、おそらく十分な金額が集まらないでしょうから、先進国政府が資金を出し合う必要があるかもしれません。先進国間の負担額割合の交渉は容易ではなさそうですが、頑張ってもらいましょう。

もう一つの解決策としては、特許を持った会社が特許を持たない製薬会社に製造を委託して大量のワクチンを製造してもらい、それを高値で販売するというものです。

途上国政府が高値で買ったワクチンを国民に安く販売し、その差額を先進国から援助してもらう、ということも可能でしょう。こちらの方が市場原理を活かすという観点からは望ましいのかもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事情と異なる場合があります。

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塚崎 公義