ワクチン特許権の放棄を製薬会社にさせるべきか。今は良くても将来は?

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新型コロナワクチンの特許権を放棄させようという動きがあるが、それによって将来の医薬品開発が進まなくなることが心配だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

心情的には理解できるが

経済について考える時、暖かい心と冷たい頭脳の両方が必要です。筆者も被災地に支援の寄付をするなど、暖かい心は人並みに持ち合わせているつもりですが、冷たい頭脳も鍛えているつもりです。

今回の新型コロナワクチンの特許権の話は、特許権を持つ製薬会社に特許権の一時的放棄をさせようというものです。世界中の製薬会社が一斉にワクチンを製造し安価で供給することができるようにする、というものですから、暖かい心としては非常にすばらしいものだと思います。

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しかし、筆者の冷たい頭脳が特許権の放棄に反対しているので、本稿はその理由についても読者にお伝えするものです。くれぐれも筆者を冷たい人間だと批判されることがありませんように。

特許制度には存在理由がある

特許という制度がなぜ存在しているのかを考えてみましょう。特許という制度がなければ、新しい薬を開発する会社が出てこないため、医学が進歩しなくなってしまうからです。

多額の費用をかけて新薬を開発しても、開発に成功した途端にライバルたちが同じ薬を作り始めたら、開発した会社は開発費を払ったことを後悔するでしょう。そして次からは、誰かが新しい薬を開発してくれるのを待つことにするでしょう。

すべての製薬会社が「ライバルが新薬を開発するのを待とう。開発された新薬と同じものを作れば良いのだから、自分で開発する必要はない」と考えるようになると、人類は新薬を開発しなくなり、ウイルス等々が大喜びするでしょう。

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執筆者
塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。【近著】なんだ、そうなのか! 経済入門』『老後破産しないためのお金の教科書』『経済暴論: 誰も言わなかった「社会とマネー」の奇怪な正体』『一番わかりやすい日本経済入門』『日本経済が黄金期に入ったこれだけの理由【雑誌寄稿等】Facebook、NewsPicks、アメブロ等にて適宜ご紹介