2年ぶりの営業黒字化に大きく貢献した「健康・環境システム」
2016年11月1日にシャープが発表した2017年3月期上期決算は、営業利益が2年ぶりに黒字化したことが話題になりました。
黒字化に大きく貢献したのは、白物家電などが含まれる「健康・環境システム」セグメントです。同部門の営業利益は対前年同期比5.2倍の増益となり、全部で7セグメントある中で最大の利益を確保しています。
では、具体的にどのような製品が貢献したのでしょうか。同社によると、「空気清浄器などPCI搭載製品などの高付加価値商品の販売拡大など」が寄与したとのことです。
ここで「PCI」というあまり聞きなれない言葉が出てきますが、PCIとは、プラズマクラスターイオン発生機のことを指しています。
プラズマクラスターのマークが付いた空気清浄器、エアコン、掃除機などの家電は有名ですが、2000年の発売以来、PCI搭載機は家庭用だけではなく、自動車、鉄道、バス、エレベーター、工場などにも普及が進んでおり、2015年までの累計販売台数は世界で6,000万台に達しています。
そもそもPCIとは?
さて、ここで改めてPCIについておさらいをしたいと思います。
シャープによると、PCI技術とは「プラスイオン(H+(H2O)m)とマイナスイオン(O2-(H2O)n)を同時に空中へ放出し、浮遊する細菌・カビ・ウイルス・アレルゲンなどの表面で瞬間的にプラスとマイナスが結合して酸化力が非常に高いOHラジカルとなり、化学反応により細菌などの表面のたんぱく質を分解して、その働きを抑制する独自の空気浄化技術」とのことです。
簡単に言えば、自然界にも存在するイオンを人為的にプラズマ放電により作り出す技術です。一見、単純な技術ですが、シャープはその効果・効能を空気浄化だけではなく、脱臭、除電などにもあることを実証しながら、様々な利用シーンに合わせた製品を開発し続けてきました。
上述したような現在の業績好調も、そうした長い歴史に裏付けされたものなのです。
頭皮ケアにも効くPCI技術搭載ドライヤーを発売
では、今後もPCIの用途拡大はさらに広がっていくのでしょうか。こうした観点で注目できるのが、最近話題となっている「頭皮ケア」に使えるPCI付きのドライヤーです。
シャープは、10月13日に「プラズマクラスター技術での頭皮のバリア機能向上(頭皮環境改善)による育毛効果を実証」という研究発表を行っており、プラズマクラスターイオンを照射することで頭皮環境が改善し、育毛を促す作用があることが確認できたとしています。
また、10月20日にはうるおい保持、皮脂バランス調整、ふけ・かゆみ抑制の3つの頭皮への効果を実証したドライヤーの新製品(型番:IB-GX9K)を発表しています。
シャープは2011年からプラズマクラスターを搭載したドライヤーを発売していますが、今回の新製品では、これまでのうるおい効果やパサつき防止効果に加え、頭皮ケアも加わったことが注目すべきポイントです。
まとめ
なお、この新製品には「かっさアタッチメント」と呼ばれる人の手のような形をしたマッサージ器具が付いており、頭皮改善効果がPCIだけによるものではないことには注意が必要です。
いずれにせよ、今後、さらにPCI技術を高め、かっさアタッチメントなしでも十分に頭皮ケアができ、育毛にも役立つドライヤーが開発されるかに注目したいところです。
また、ドライヤーに限らず、シャープが他の家電製品でもさらに独自技術を深化させ、用途拡大を進めていけるかにも注視していきたいと思います。
和泉 美治