ここで利用した水は、24時間365日稼働する地熱発電所のサイクルに戻されます。この施設は年間4000トンのCO2を大気からろ過することができますが、自然界でその量のCO2を木に吸収させるには8万本の木が必要になるといいます。

昨年9月、ドイツの自動車メーカー・アウディ(Audi)は、この世界最大規模のプロジェクトに参画し、CO2削減に向けて未来のテクノロジーを推進していると発表しました。これにより、アウディはクライムワークス社を通して大気から1000トンのCO2を除去することになり、CO2削減に寄与するとしています。

上記と同じ試みはカナダでも行われています。カナダのカーボン・エンジニアリングのプラントでは、空気を水酸化カリウム溶液に通し、CO2を炭酸カリウムに変え、その後さまざまな処理を行って炭酸カルシウム(CaCO3)つまり石の塊にしています。

炭酸カルシウムを900度で焼成すると(温度は異なりますが、火山の爆発に相当する反応)、酸化カルシウムとCO2が得られます。取り出したCO2を圧縮し、パイプラインを通して地下に埋められています。この試みも地球化学的CO2循環反応を応用したものと言えます。

また、生コンにCO2を封じ込めると、コンクリートの強度が増加することが分かってきました。そもそもセメントは石灰岩(CaCO3)を焼成し製造するもので、その時にCO2が排出されます。そのため、我が国CO2排出の3%はセメント業界が占めています。

三菱商事は、カナダのカーボンキュアと資本提携して、このプロジェクトを進めています。この方法は、セメント製造時に発生するよりも多くのCO2を閉じ込めることが可能とのことです。

さらに、大成建設はセメントを使わず、CO2から作った炭酸カルシウム(石)を用いるコンクリートの製造方法を開発していますが、この方法も脱炭素に寄与する一つと言えるでしょう。