東芝が通期会社予想を上方修正

2016年11月8日に、東芝(6502)は2017年3月期通期業績の上方修正を発表しました。今期に入り、同社は2017年3月期上期(4-9月期)の上方修正を3回行ってきましたが、通期見通しを上方修正したのは今回が初めてです。

ちなみに、営業利益については期初予想比で+600億円の上方修正となりましたが、セグメント別では半導体が含まれる「ストレージ&デバイスソリューション」の上方修正額が+980億円と最大でした。一方、映像事業、パソコン事業などが含まれる「その他」や、原子力発電などが含まれる「エネルギーシステムソリューション」などは下方修正されています。

今回、特に注目するべきポイントは、「消去・全社」に含まれていたリスク費用(バッファー的な費用)は、各セグメント数値に振り分けられた一方で、新たに映像事業など課題事業のリストラ費用600億円が織り込まれていたことです。

なぜ注目するべきかというと、今年度の営業利益は期初計画を1,200億円も上回る2,400億円程度にまで達した可能性があるということにもなり、また、コンセンサス予想が約2,200億円程度であったことを考慮すると、ポジティブサプライズにもなるためです。

もちろん、前年度までに“膿を出し切った”とされた映像部門で、なぜ、再び追加のリストラが必要となったのかについては、今後精査する必要があることは言うまでもありません。

発表翌日の株価は下落

では、この発表を受けた翌日、11月9日の株価はどのように動いたのでしょうか。結果は、寄り付きは高く始まったものの、トランプショックにより終値は前日比▲5.1%下落とTOPIX(▲4.6%下落)をやや上回る下落率となりました。

おそらく、寄り付きが高く始まった理由は、前日の発表がポジティブに受け止められたためと考えられます。仮に、「トランプショック」がなければ、円高により下方修正が相次ぐ電機セクターの中で稀に見る上方修正であったため、大幅高になった可能性も考えられます。

トランプショック以外に残る懸念

とはいえ、トランプショックの影響はともかく、東芝には、まだ少なくとも以下4点の懸念ポイントが残ることには注意が必要であると考えます。

第1は、今年度の会社計画には主に賞与削減等による緊急対策費が含まれており、これによる利益の嵩上げ効果が来年度には剥落する可能性が高いことです。

第2は、今年度の業績上振れの主因であるメモリーの好調が来年度も続く確実な根拠が乏しいことです。

第3は、バランスシートは依然として脆弱であり、その補強のために増資リスクが高いことです。

そして第4は、一連の不正会計問題が刑事事件化する可能性が残っており、成行き次第では東証の特設市場指定銘柄解除の審査にも影響を与える可能性が残ることです。

これらの懸念は、トランプショック以上に同社の今後にとって重要なポイントです。11月11日(金)に発表予定の決算では、東芝がこうした懸念に対して、どのように対処していくかに注目していきたいと思います。

東芝の過去10年の株価推移

 

和泉 美治