厚生年金が「月額25万円以上」の高額ゾーンに注目
先ほどの分布を見ると、少数派ではあるものの、月額25万円以上の老齢厚生年金を手にしている人が見受けられました。なかには、平均の倍以上の年金月額を受け取っているケースも。こうした「高額ゾーン」に属している人たちは、現役時代にどのくらい稼いでいたのでしょうか。
ここで「厚生年金保険料」が決まる仕組みをおさらいしましょう。
厚生年金保険料を決める基準となるのは、4~6月の収入金額から算出する「標準報酬月額」です。
ちょっと解説「標準報酬月額】
報酬とは、基本給のほか役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えたもので、臨時に支払われるものや3カ月を超える期間ごとに受ける賞与等を除いたもののことであり、報酬月額を1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分け、その等級に該当する金額を標準報酬月額といいます。
標準報酬月額は原則として年に一度見直されます。標準報酬月額に保険料率を掛けたものが保険料になり、在職中の標準報酬月額に再評価率を掛けたものを平均したものが年金額の計算に使われます。
引用:日本年金機構「標準報酬月額」
そして、この「標準報酬月額」を「保険料額表」にあてはめることで、年金保険料が決まります。
とはいっても、全額自己負担というわけではありません。会社と折半で負担し、毎月の給与から天引きされます。賞与においても、厚生年金保険料率(18.3%)をかけた金額の半額(会社と折半のため)が天引きされます。
また、先ほどの「標準報酬月額表」は、月額9万3000円未満から63万5000円以上までの32段階(※)に分かれています。
※ただし、32段階目は2020年より新設された段階。それ以前は31段階でした。
ということは、上の段に位置している人は厚生年金の「高額ゾーン」に属している可能性が高い、と考えられます。
ではここで、そこに該当している人の年収を算出してみましょう。30~32等級の年金保険料の負担額(会社と折半した後の金額)は、以下の通りです。
30等級…5万3,985円(標準報酬月額:59万円:57万5000円以上60万5000円未満)
31等級…5万6,730円(標準報酬月額:62万円:60万5000円以上63万5000円未満)
32等級…5万9,475円(標準報酬月額:65万円:63万5000円以上)参考:日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)」
ここからおおよその年収を掴むため、各等級の最低ラインの数値を12カ月分にしてみましょう。
- 30等級→57万5000円×12カ月=690万円
- 31等級→60万5000円×12カ月=726万円
- 32等級→63万5000円×12カ月=762万円
つまり、高額の厚生年金を受給している人は、年収700万円前後のラインを超えていた可能性が高いと推測することができそうです。
なお、日本人の平均年収である436万円(※)の場合、ひと月あたりは36万3000円に。単純計算ではありますが、このラインだと22等級に該当します。
※ 国税庁「令和元年(2019年)分 民間給与実態統計調査」