毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」を見て、老後の年金受給額に不安を感じることはありませんか。

日本の公的年金は、

  • 20歳以上のすべての人が加入する「国民年金」
  • サラリーマンや公務員が加入する「厚生年金」

の二つのしくみから構成されています。

そして、年金受給額をアップさせる方法として「繰り下げ受給」があります。繰り下げ受給は、最大で42%(2022年から最大84%)も年金額が増える制度です。

増額率をみるとお得なイメージのあるこの制度。実際のところ、どのぐらいの人が利用しているものなのでしょう?年金制度のしくみの基本も含めてみていきたいと思います。

日本の年金制度のキホン

まず日本の年金制度は、以下のような「2階建て」で構成されています。

1階部分「国民年金」・・・日本に住む20歳以上60歳未満の全員に加入義務
2階部分「厚生年金」・・・公務員や会社員などが「国民年金」に上乗せして加入

厚生年金に加入していた人(サラリーマン・公務員)は「老齢基礎年金」+「老齢厚生年金」を受給することができ、国民年金のみに加入していた人(自営業、フリーランス、専業主婦(夫))は「老齢基礎年金」(1階部分のみ)を受給することになります。

個人差の大きい年金受給額

厚生労働省が公表している「令和元年(2019年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2019年度末時点の国民年金受給者の平均年金月額は5万6000円、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は14万6000円でした。

厚生年金の方が受給額も大きくなっていますが、給与水準や勤務年数により年金額にも違いが出てきます。

厚生年金は給与・賞与の額によって年金保険料が上下し、厚生年金保険料が給与から天引きされます。

一方、国民年金の場合は誰でも一律の保険料(令和2年(2020年)度は1カ月あたり1万6540円 ※)で、加入期間に応じて金額が決まるという制度となっています。

※日本年金機構「国民年金保険料

国民年金の注意点

さきほどお伝えしたように、国民年金の年金保険料は収入に関係なく一律に定められています。ただ、老後は、老齢基礎年金を「満額」受給する場合でも月額6万5141円(年額約78万円)という金額です。

実はこの国民年金の「満額」とは40年間継続加入した場合の金額。保険料の未納期間が長いと受給額は少なくなるのです。

また、以前は「25年以上の加入」が受給条件でしたが、2017年8月1日以降は10年間に短縮されたため、加入年数が短い人でも受給が可能となりました(※)

この場合、加入期間が10年だった人の年金額の目安は、40年加入した人のおおよそ4分の1となります。

(※)厚生労働省「新たに年金を受けとれる方が増えます(受給資格期間25年→10年)

厚生年金の注意点

国民年金よりも手厚く、一般的に受給額が大きい厚生年金にも注意しておきたい点があります。厚生年金では給与水準により年金保険料や年金額に差が生じるからです。

毎月の厚生年金保険料は「標準報酬月額」をもとに算出されます。また、ボーナス(賞与)については「標準賞与額」をもとに天引きされます。

ちょっと解説

「標準報酬月額」…事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した金額
「標準賞与額」…税引き前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額

参考:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?

つまり、現役時代の給与水準が年金保険料や将来の年金額に反映されることになるわけです。

ここまでのお話で、私たちが老後に受け取れる年金額は、現役時代の働き方やこのように年金額は千差万別だということはお分かりいただけたかと思います。

次では、今回のメインテーマである「繰下げ受給」についてお話を進めていきます。

年金の「繰下げ受給」はこんな仕組み

そこで今回のお話の本題、「繰下げ受給」のしくみについてお話していきましょう。

老齢年金の受給開始は「原則65歳」からです。この受給開始を66歳以降に先延ばしにする「繰下げ受給」の制度を利用することで、受け取れる年金額を増やすことができます。

現在は最長70歳までの延期が可能であり、最大で42%のアップ。さらに2022年4月以降は75歳まで繰り下げできるようになり、最大で84%もの割り増しが可能となります(※)。

※厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました

「繰下げ請求時の年齢と増額率」

1941年(昭和16年)4月2日以後に生まれた方

  • 66歳0カ月~66歳11カ月・・・8.4~16.1%
  • 67歳0カ月~67歳11カ月・・・16.8%~24.5%
  • 68歳0カ月~68歳11カ月・・25.2%~32.9%
  • 69歳0カ月~69歳11カ月・・・33.6%~41.3
  • 70歳0カ月・・・42.0%

出典:日本年金機構「老齢基礎年金の繰下げ受給

増額率は月単位で「繰下げ月数×0.7%(0.007)」が適用され、その増額率は一生キープされます。

さらに、2022年4月からは

昭和27年(1952年)4月2日以降に生まれた人に限り、最大で[繰下げ月数×0.7%]×10年(×12か月)=84%

が適用されます。

年金の繰下げ請求をする場合は、「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書」等の書類を提出して手続きを行ないます。(※)

※日本年金機構「66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき

「繰上げ」「繰下げ」受給の特徴

老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金の両方を受給できる人の場合、受取り時期を早める「繰上げ受給」では両方とも繰り上げる必要があります。

一方、受給額が割り増しとなる「繰下げ受給」では、どちらか片方、または両方を選択して繰り下げることが可能です。

年金の「繰上げ」「繰下げ」受給はどのくらいの人が利用中?

このような割増額となる「繰下げ受給」が気になりますが、「繰下げ」「繰上げ」制度はどのくらいの割合で利用されているのでしょうか。

冒頭の「令和元年(2019年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、みなさんの選択状況をみてみましょう。

新法厚生年金保険(老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況(2019年度)

  • 繰上げ…0.4%
  • 本来…98.8%
  • 繰下げ…0.8%

国民年金 受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況(2019年度)

  • 繰上げ…12.3%
  • 本来  …86.3%
  • 繰下げ…1.5%

※旧法老齢年金(5年年金を除く)・旧法通算老齢年金の受給権者と新法老齢基礎年金の受給権者を対象

受給時期を早める「繰上げ」受給の割合は国民年金で10%を超えています。しかし割増しになる「繰り下げ」受給は、厚生年金・国民年金ともに現在のところ約1%前後にとどまっているようです。

さいごに

年金受給額が割り増しとなる「繰り下げ受給」は、長生きするほどメリットを享受できます。とはいえ、直前の「繰上げ・繰下げ受給状況」のデータを見る限り、老後資金の不安からか、実際にはなかなか選択しにくいというのが実状かもしれませんね。

また、いったん繰下げ請求した場合、取り消しができません。利用を考えたときにはご自身の健康状態や資金状況などをじゅうぶんに考慮することが安心につながります。

公的年金だけでは心もとない、と感じる場合は、個人年金保険、iDeCo、つみたてNISAなどを活用した資産形成で老後に備えていく、という方法を検討してみるのもおススメです。

人生100年時代はすぐそこに来ています。

長い老後を見据えた「お金の準備」は先手先手で進めていかれることをおすすめします。

「金融商品って色々ありすぎてどれを選べばいいのか分からない」「投資って元本保証ではないから不安」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

お金の貯め方・増やし方のコツがなかなか見つからない、と感じたら、一度資産運用のプロに相談する手もあります。あなたとご家族のライフスタイルにあった、無理のない「お金の増やし方」を見つけるヒントが得られるかもしれません。

参考資料