個人差の大きい年金受給額

厚生労働省が公表している「令和元年(2019年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2019年度末時点の国民年金受給者の平均年金月額は5万6000円、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は14万6000円でした。

厚生年金の方が受給額も大きくなっていますが、給与水準や勤務年数により年金額にも違いが出てきます。

厚生年金は給与・賞与の額によって年金保険料が上下し、厚生年金保険料が給与から天引きされます。

一方、国民年金の場合は誰でも一律の保険料(令和2年(2020年)度は1カ月あたり1万6540円 ※)で、加入期間に応じて金額が決まるという制度となっています。

※日本年金機構「国民年金保険料

国民年金の注意点

さきほどお伝えしたように、国民年金の年金保険料は収入に関係なく一律に定められています。ただ、老後は、老齢基礎年金を「満額」受給する場合でも月額6万5141円(年額約78万円)という金額です。

実はこの国民年金の「満額」とは40年間継続加入した場合の金額。保険料の未納期間が長いと受給額は少なくなるのです。

また、以前は「25年以上の加入」が受給条件でしたが、2017年8月1日以降は10年間に短縮されたため、加入年数が短い人でも受給が可能となりました(※)

この場合、加入期間が10年だった人の年金額の目安は、40年加入した人のおおよそ4分の1となります。

(※)厚生労働省「新たに年金を受けとれる方が増えます(受給資格期間25年→10年)

厚生年金の注意点

国民年金よりも手厚く、一般的に受給額が大きい厚生年金にも注意しておきたい点があります。厚生年金では給与水準により年金保険料や年金額に差が生じるからです。

毎月の厚生年金保険料は「標準報酬月額」をもとに算出されます。また、ボーナス(賞与)については「標準賞与額」をもとに天引きされます。

ちょっと解説

「標準報酬月額」…事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した金額
「標準賞与額」…税引き前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額

参考:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?

つまり、現役時代の給与水準が年金保険料や将来の年金額に反映されることになるわけです。

ここまでのお話で、私たちが老後に受け取れる年金額は、現役時代の働き方やこのように年金額は千差万別だということはお分かりいただけたかと思います。

次では、今回のメインテーマである「繰下げ受給」についてお話を進めていきます。