コロナ禍で支出をやりくりする女性の対応力

フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所が2020年に行った「ビジネスパーソン1万人アンケート」によると、コロナ禍によって、働き方は「7割が従来通り、3割が自宅勤務へシフトした」という影響を受けたことがわかりました。

これを男性、女性、年代別に分けてみてもその水準に大きな違いはありません。ただ若年層の方が働き方への影響は大きく出ているようです。特に男性の方にその傾向が強く、20代と50代の“影響があった”とする差は9.2ポイントと、女性の3.5ポイントを上回っています。

収入への影響も女性の方が総じて少ないようです。どの年代でも収入に変化がないと回答した比率は女性の方が高くなっています。

ただ、収入減に対する対策は、男性、女性、年代で違っています。女性の場合、20代は「資産を取り崩さざる得ない人」が多いものの、30代以降は「支出を減らして何とかする人」が多くなっています。これに対して、男性は総じて「資産に手を付けざるを得ない人」が多くなっています。

データからわかる範囲ですが、コロナ禍は働き方や年収に対して、男性、女性にかかわりなく大きな影響を与えていることがわかります。ただ、女性の方がその影響に対してうまくやりくりして、対応できているように見受けられます。

図表1:男性、女性、年代別のコロナ禍の生活への影響 (単位:人、%)

注:働き方で変化無しには「時差通勤になった」を含む。出所:フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所「ビジネスパーソン1万人アンケート」(2020年)

コロナ禍—女性が資産形成のための運用へと一歩踏み出すチカラに

資産運用への影響も男性、女性、年代で分析すると、働き方や収入よりも特徴が強く出ているようです。

以前の記事、『収入減が目立つコロナ禍で、投資を積極化した1割の人の理由』で言及した通り、コロナ禍で投資を始めたり増額した人は全体の9.6%、投資を止めたり投資金額を減額した人は10.9%と、コロナ禍が資産運用にはポジティブにもネガティブにも同じくらい影響を与えていたことがわかりました(もともと投資をしていなかった人49.7%、変わらず投資を継続している人29.8%)。

それを細かくセグメントに分けてみると、女性は総じてネガティブにもポジティブにも反応が弱く、男性が総じて反応が強いことがわかります。その中で、ネガティブでは20-30代の男性の比率が高く、ポジティブでは30代女性と20-30代男性の比率が高くなっています。

さらにコロナ禍で投資にポジティブに反応した人の理由として、「収入減などで資産運用の重要性に気が付いた」ことを挙げた人が相対的に多いことが注目できます。

コロナ禍が、特に女性に対して、“相場を相手にした資産運用“ではなく、”資産形成のための運用”に向かわせたとすれば、これは大きな一歩といえるかもしれません。

 

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史