2020年を振り返るときコロナ禍の影響を分析しないわけにはいきません。2020年のビジネスパーソン1万人アンケートでは、コロナ禍の影響を、働き方、収入、資産運用のそれぞれの面で聞いています。
3割が働き方を変え、4割が収入減
アンケートの回答者12,001人のうち28.3%が「働き方が変わった」、37.7%が「収入が減った」と回答しています。コロナ禍は本当に大きな影響を与えたことがわかります。
働き方の変化では13.1%が「週に1-2回の自宅勤務」、7.3%が「ほぼ毎日自宅勤務」、7.0%が「時差通勤」と回答しています。また自宅勤務を余儀なくされている人は、首都圏で相対的に高く(35.8%)、年収の高い世帯ほど高い傾向がありました。
収入面への影響は働き方以上に深刻です。16.5%が「ボーナスが減った」、18.9%が「毎月の収入が減った」、2.3%が「収入が全くなくなった」と回答し、そのうちの47.3%が「資産に手を付けることになった」と答えています。
そうした傾向は、年収の低い世帯ほど強く出ていることもわかりました。年収の低い世帯で、収入減から資産に手を付けてしまったとすれば、将来の生活を支える資金が減り、厳しい状況が長く続くことになりかねない点は気にかかるところです。
コロナ禍で資産運用の必要性を感じた人
一方、資産運用への影響は、働き方や収入への影響ほど大きくありませんでした。20.5%が「投資に影響した」と回答していますが、この半分が投資を前向きに捉えるきっかけになったことは予想外でした。
影響を受けたと回答した人の約半分、1,156人はコロナ禍を受けて「投資を開始」、「投資額を増額」と回答しています。「コロナ禍が投資の背中を押した」といえるでしょう。
しかも、「収入減などで資産運用の重要性に気がついた」を理由として挙げた人が46.5%と最も多かったことは驚きでした。「相場急落がチャンスと思った」(39.8%)人よりも、そもそもの資産運用の目的に気が付いた人が多かったことは、よい傾向ではないでしょうか。
特に20代、30代でその傾向が顕著だったことは、「投資は目的を達成する手段である」と理解する若い人が増えていることを想起させます。
もちろん懸念は残ります。3割の方の働き方に影響があり、4割の方の収入減をもたらしたコロナ禍は依然続いています。収入減となった人の半分が「資産に手を付けた」と回答するなど、生活面への未曽有の影響は今後、じわじわと投資行動にも悪影響をもたらす可能性も否定できません。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史