繰り上げ受給にはデメリットも
「早めに受給を始める」繰上げ請求にはいくつかのデメリットが存在します。利用する際は、以下の内容を十分理解した上で判断する必要があるといえるでしょう。
- 一生減額された年金を受けることになります。 65歳以降も一度減額された金額は戻りません。ただし、振替加算の加算対象者は、65歳からでなければ振替加算が加算されないことから、65歳になると振替加算額分は増額されます。
- 繰上げ請求した後に裁定の取消しはできません。
- 寡婦年金の受給権者が老齢基礎年金を繰上げ請求すると寡婦年金は失権します。また、老齢基礎年金を繰上げ受給している人は、寡婦年金の請求はできません。
- 受給権発生後に初診日があるときは、障害基礎年金が受けられません。また、繰り上げ支給を請求する前の病気やけがで障害がある場合でも、障害基礎年金を請求できない場合があります。
- 65歳前に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択することになります。多くの場合は、遺族年金を選んだ方が有利であるため、65歳まで減額した老齢基礎年金が支給停止になり、停止解除後も減額支給のままでデメリットは大きくなります。
- 受給権者は、国民年金の任意加入被保険者になれません。
引用:日本年金機構「繰上げ請求の注意点」
さいごに
受取額が減るかわりに、原則である65歳より早い時期から年金をもらえる「繰り上げ受給」については、「金額が少なくても長くもらえば、そこまで損はしないのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
ここで抑えておきたいのが、2019年の日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳、という点でしょう。
もし平均寿命まで生きていた場合、総額ではかなりの差が出る計算になります。一度決まった減額率は、65歳以降も一生涯変わらない点については、一番意識しておきたいところです。
さらにいうと、繰り上げ受給・繰り上げ受給ともに、一度請求すると取り消しができません。
利用を考えた場合は、ご自身の貯蓄額の現状、そして健康面など十分考慮したうえで、慎重に検討なさることが、安心といえるでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」
- 厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
- 厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」