ファーストレディ、‟ドクター”・ジル・バイデン(Dr.バイデン)が自ら「ドクター」という敬称をつけることについて、米コラムニストのジョセフ・エプスタイン氏の寄稿記事(※1)が大炎上しました。
「医者でもないのにドクター?」「『詐欺』まがいのように思う」と「ふさわしくない敬称を外すべきだ」と強く批判しました。それに対して、著名人から女性軽視だという反論の声が上がりました。実は、彼女はオバマ政権の副大統領夫人の時からそう名乗っていますので新しいことではありません。
これについて、米大学の事務員として働いていた筆者が「下から目線」で考えたドクターという敬称への固執や、彼女の今後も教師を続けるという選択についての意見を述べたいと思います。
「Dr.バイデン」敬称へのこだわり
「ドクター=医師」と連想する人が多いのは事実です。しかし博士号取得者、特に大学教授には「ドクター」という敬称がつけられます。Dr.バイデンは2007年、55歳の時に教育学博士号(Ed.D)を取得しています。そのため、Dr.バイデンと名乗ることは何も悪いことではありませんし詐欺ではありません。
しかし博士号取得者が自ら「ドクター」をつけるのは、時と場合そして個人の性格にもよるのではないか、とアメリカの大学に所属した経験から気付きました。因みに、ブッシュ政権(2001~2009年)副大統領の妻、リン・チェイニー夫人は英文学の博士号(Ph.D in English)取得者です。しかし、ホワイトハウスのウェブサイト(※2)によれば「ミセス.チェイニー」で通したようです。
筆者がまだ大学1年生だった頃、ある教授を「プロフェッサーxxx」と読んだら、「ドクターxxx」と言い直されたことがあります。逆に「ドクター」をつけて呼ぶと、ファーストネームでいいよ、という教授もいました。
事務員という立場の時は気楽にファーストネームで呼べる教授もいれば、ドクター敬称を忘れるなと言わんばかりに、メールや書類に「ドクターxxxより」と書いてくる教授もいます。
博士号をもつ女性教授の場合、「ドクター」というタイトルは性別に関係ない公平な敬称という意味で「ドクター」敬称を好む女性教授もいます。
また、未だに女性教授を馬鹿にした態度をとる男子学生は少なくありません。そういうことから女性の権利やアチーブメントをアピールするために、女性の教授が自ら「ドクター」を強調することは必要なのかもしれません。
Dr.バイデンの場合も、自宅郵便物に「セネター(上院議員)&ミセス.バイデン」と「ミセス」と書かれることに抵抗があったと、女性の地位向上という観点でも「ドクター」と呼ばれることに固執しているようです。