米国は日本以上の学歴社会

しかし、米国や欧州などの先進国では、日本以上といえる学歴社会の存在があります。筆者は米国の大学に会計学専攻で留学していましたので、それを肌で感じたものです。

日本は新卒の入社時の学歴で評価されます。そのため、社会経験がない学生が一流企業に入るための切符こそがこの学歴なのです。日本では入社後に丁寧な研修を経て現場に配属される前提の会社が多いために、プログラマー職での採用に「学部や専攻不問」というのは珍しくありません。つまり、就活戦線は「大学で何を学んだか?しっかり学んだか?」より「学校名の強さ」で決まる要素が大きいといえるでしょう。

一方で、米国は日本以上に学歴の中身までしっかり精査されます。まず、大学の専攻と応募職種に整合性があることが重視されます。プログラマー職の採用だと、情報工学(computer science)の学部出身者であることが求められます。さらに大学のGPA(成績評価基準)も重視され、大手IT企業や投資銀行ではGPAの足切り点が設けられているのも珍しくありません。

外資系コンサルのマッキンゼーでは、ハーバード大、スタンフォード大の学生には、専門のリクルーターがつくほど学校名での積極採用をしているという話もあるほどなのです。

入社後も出世は学歴が関係します。実際に筆者が働いていた米国系企業では「課長クラス以上は、全員MBA取得必須」といわれたことがあります。また、転職時には前職の働きぶりを確認するリファレンスチェックがあり、働いた後の実績も影響します(筆者も経験済)。

一度、キャリアで躓いた人のやり直しは簡単ではないのです。

フランスや新興国も学歴の壁は大きい

フランスでも米国と同様に学歴がキャリアを決めます。

フランスではグランゼコール(Grandes Écoles)と呼ばれるエリート校があり、「グランゼコールを出たか?どのグランゼコール出身か?」がキャリアを左右するのです。就職できる会社だけでなく、入社時の給与も違うほどです。

また、新興国の学歴の重要性は言わずもがな。中国では日本とは比べ物にならないほどの苛烈な学歴競争社会で、中国国内の一流大学にあぶれた学生は、他国へ留学をして巻き返しを測る戦略が一般化するほどです。さらに、世界には生まれた身分で一生が固定化される国もあるのです。

学歴は一度獲得すると、後から容易に変更できません。こうした他国の状況を鑑みるに、日本は特別に学歴を使った人生の立て直しが難しいとは感じません。