自分の老齢年金と遺族年金、同時に受け取ることはできる?

「夫に先立たれた後は、夫と自分の2人分の年金がもらえる」と思われがちですが、実際はそうではありません。年金制度は「1人1年金」が原則とされ、自分自身の老齢基礎年金と遺族基礎年金は同時には受け取れないのです。

一方、遺族厚生年金をもらっていた人が65歳になって老齢厚生年金を受ける権利が発生した場合は、自分の老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止となります。

遺族厚生年金よりも自分の老齢厚生年金のほうが多い場合では、遺族厚生年金は全額支給停止になります。自分の老齢厚生年金がなければ遺族厚生年金は減額されません。

つまり、ご自身の「老齢基礎年金」はそのままで、「遺族厚生年金」と「(自分の)老齢厚生年金」のどちらか多い方がもらえる、ということになります。

参考:日本年金機構「平成19年4月から改正された65歳以上の者に係る遺族厚生年金の見直しの内容について、具体的に教えてください。

夫が「国民年金の受給者」だった場合

先述の通り、「夫婦ともに年金暮らしであり、国民年金の受給者である夫が先立った」という場合、妻は「遺族基礎年金」を受け取ることができません。そのため、金銭的にはかなりの打撃を受けることに。賃貸暮らしなどの場合、生活はかなり厳しい状況に陥ってしまうでしょう。
そのような状況に備え、今のうちに考えておきたい選択肢をみていきます。

1.長く働く

総務省の2019年労働力調査では、65歳以上の就業者数は906万人という結果に。これは、2015年から174万人も増加した数字です。今のうちから長く働くためのスキルを身につけ、収入を得る期間をできるだけ長くするという手もありますね。

参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均(速報)結果の要約

2.年金の繰下げ受給をする

原則65歳になってから受給となる年金ですが、66~70歳までの期間は1カ月単位で繰下げ受給をすることができます。これにより、最大42%の増額が可能に。2022年4月以降は75歳まで繰下げられるようになり、最大84%まで増額できます。ある程度まとまった老齢資金があるのなら、繰り下げ受給をしてトータルの受給額を増やすのもいいでしょう。

参考

3.働きながら年金をもらう

収入面を手厚くしたいなら、働きながら年金受給をするという手もあります。ただし、「在職老齢年金制度」により、基準額を超えた年金の一部または全部が支給停止となります。支給停止となった部分は、繰下げても増額されません。

なお、2022年4月以降は60~65歳未満の基準額が引き上げられ、60歳以降はすべて月47万円に。より働きやすい条件になるといえるでしょう。

参考:日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金制度)