新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が始まって、はや1年。
先行き不透明な中、企業の業績悪化にともない、はたらく人々を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いています。
子どもの成長に自分たちの老後。人生で必要となる資金を考えると、家計の見直しなどによる自衛策がこれから一層、重要となるでしょう。
内閣府が公表している家計の貯蓄率は、2020年4~6月期には、比較可能な1994年以降で最高の23.1%でしたが、最近公表された、2020年7~9月期には11.3%にまで下がっています。(季節調整値「季調系列」の数値)(※)。
今回は、日本人の平均的な年収の額と貯蓄額の傾向、そして、長期化するコロナ禍で、貯蓄を守るための家計管理について「固定費」に着目して考えていきましょう。
※内閣府『計数表(家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列))』
日本人の平均給与は「400万円台」
まず日本の平均給与と貯蓄額のデータを見ていきましょう。
国税庁の「平成元年(2019年)分民間給与実態統計調査結果について」によると給与所得者のうち、1年を通じて勤務した給与所得者(5,255万人/男子3,032万人、女子2,223万人)の1人当たりの平均給与は436万円(男子540万円、女子296万円)となっています。
男女差は大きいのですが、平均給与は年収400万円台となります。ではこの年収世帯の貯蓄額はどのくらいなのでしょうか。
以下は年収400万円台の貯蓄額となります。貯蓄には銀行預金に加えて、有価証券や投資信託、学資保険や個人年金保険、生命保険などの貯蓄性の保険商品も含まれています。ここで、総務省統計局の家計調査の結果より、年収400万円台世帯の貯蓄額の推移を追っていきます。
年収400万円台の貯蓄額と推移
2005年
- 年収400~450万円の世帯…743万円
- 年収450~500万円の世帯…761万円
2010年
- 年収400~450万円の世帯…643万円
- 年収450~500万円の世帯…773万円
2015年
- 年収400~450万円の世帯…932万円
- 年収450~500万円の世帯…930万円
2019年
- 年収400~450万円の世帯…861万円
- 年収450~500万円の世帯…958万円
貯蓄額の推移から経済変動の影響を受けている様子が分かります。
2008年にアメリカを発端とする「リーマン・ショック」が起き、連鎖的に世界規模の金融危機が発生しました。日本では2009年3月に日経平均株価がバブル経済崩壊後の最安値を更新するなど、数年にわたり影響は続きました。2010年はそのような景気低迷の影響を受けた結果だといえそうです。
その後、日本では2013年ごろから政府の経済政策「アベノミクス」相場が始まり、日本経済にも回復の兆しが訪れました。2015年の貯蓄額の増加には、このような世の中の経済変動が表れているといえそうです。
近年、貯蓄額は年収の約2倍で推移していますが、昨今のコロナ禍は、貯蓄額にも影響を及ぼすものであると考えられます。
参照
- 国税庁「令和元年分民間給与実態統計調査結果について」(令和2年9月発表)
- 総務省統計局「家計調査」 二人以上の世帯-貯蓄・負債(年間収入階級別)(「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」データより)
- 日本経済新聞社「日経平均 読む・知る・学ぶ」