(3)食っていける
資格貧乏という言葉があるように「最近は弁護士でも仕事がないと聞くし、資格なんて取っても意味がない」と思う人もいるでしょう。しかし、私の持つ社労士の資格でいえば、新型コロナウイルスの流行における給付金申請の代行といった業務が増え、ますます需要は増しています。いまはネットでなんでも情報が手に入る時代になりましたが、その信憑性や理解のしやすさについては疑問です。情報が溢れているからこそ、それを取捨選択・翻訳できる専門家が求められているのです。
また、資格を取ったからといって独立する必要はありません。私のように事務所に入る勤務社労士も多く、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、勤務社労士の平均年収として男性では約534万円、女性では約459万円との結果が出ています。
「冴えないおじさん」ほど資格は取りやすい!?
これらのメリットがある「地味な資格」ですが、資格を取って仕事としていくうえでは、じつは「冴えないおじさん」であるほど有利です。管理職の人たちはチームの先頭に立って仕事をこなしながら、部下の管理やサポートもしなければなりません。それでは、よほど強い意志を持たないと、資格試験のための勉強時間は捻出できません。一方で、出世できなかった人には部下がいません。主任や係長でも部下は少数です。自分のペースで仕事を進めることができ、勉強時間を確保しやすいのです。
そして、中小企業や零細企業の経営者たちの多くは、自社の社員に悩みを抱えています。「遅刻する」「やる気がない」「向上心がない」……。安定した会社で順風満帆に出世してきた人たちにとって、こういった社員の気持ちも理解しつつ、経営者の悩みに寄り添ってアドバイスをすることは、意外と難しいかもしれません。むしろ、「会社員時代に活躍できなかった人」のほうが、過去の自分に近い人のマインドもわかるため、「社長の良き相談相手」になれる可能性が高いのです。
中年から心機一転し、新しいキャリアを描くためのひとつの選択肢として、「地味な資格」を考えてみてはいかがでしょうか。
■ 佐藤 敦規(さとう・あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。新卒での就職活動に失敗。印刷業界などを中心に転職を繰り返す。窓際族同然の扱いに嫌気がさし、50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。企業を相手に、就業規則や賃金テーブルの作成、助成金の申請などの相談を受けている。資格取得によって収入が200万アップするとともに、クライアントの役に立っていることを実感し、充実した生活を手に入れた。お金の知識を活かして、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「THE21」などの週刊誌やWebメディアの記事も執筆している。
佐藤氏の著書:
『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』
佐藤 敦規