年金分割の現状は?
さいごに、年金分割の現状をみていきましょう。実際の件数や年金分割によって変動する金額は、どのくらいなのでしょうか。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報」をもとにした、厚生年金保険(第1号)における「離婚などに伴う保険料納付記録の分割件数の推移」は以下の通りです。(カッコ内は離婚件数)
- 2015年度:2万7149件(22万8879組)
- 2016年度:2万6682件(21万9351組)
- 2017年度:2万6063件(21万4069組)
- 2018年度:2万8793件(21万2871組)
- 2019年度:2万9391件(21万3349組)
離婚件数自体は減少傾向である一方、厚生年金の分割件数は増加傾向にありますね。とはいえ、分割年金をした割合は離婚件数の1割程度と、そこまで多いとはいえないでしょう。
続いて、実際の金額の変動もみていきましょう。分割改定後の平均年金月額の変動は、以下の通りです。
第1号改定者…離婚した夫婦の対象期間標準報酬総額が多い方。(元夫側に多い)
第2号改定者…離婚した夫婦の対象期間標準報酬総額が少ない方。(元妻側に多い)
第1号改定者
平均年金月額(円)
- 2015年度:13万6995円(改定前)→11万1329円(改定後)
- 2016年度:14万123円(改定前)→10万9620円(改定後)
- 2017年度:14万2713円(改定前)→11万1892円(改定後)
- 2018年度:14万3208円(改定前)→11万2272円(改定後)
- 2019年度:14万3162円(改定前)→11万4025円(改定後)
平均年金月額の変動差
- 2015年度:2万5666円減
- 2016年度:3万503円減
- 2017年度:3万821円減
- 2018年度:3万937円減
- 2019年度:2万9137円減
第2号改定者
平均年金月額(円)
- 2015年度:5万4819円(改定前)→8万1647円(改定後)
- 2016年度:4万8546円(改定前)→8万513円(改定後)
- 2017年度:4万9741円(改定前)→8万799円(改定後)
- 2018年度:5万1436円(改定前)→8万2701円(改定後)
- 2019年度:5万3405円(改定前)→8万4056円(改定後)
平均年金月額の変動差
- 2015年度: 2万6828円増
- 2016年度:3万1967円増
- 2017年度:3万1058円増
- 2018年度:3万1265円増
- 2019年度:3万651円増
さらに、3号分割のみに限定した件数と平均年金月額の変動もみていきます。
「3号分割のみ」の件数・平均年金月額の変動
男性
- 2015年度:140人
- 2016年度:148人
- 2017年度:169人
- 2018年度:245人
- 2019年度:294人
女性
- 2015年度:91人
- 2016年度:101人
- 2017年度:115人
- 2018年度:158人
- 2019年度:187人
男性の平均年金月額(円)
- 2015年度:11万3919円(改定前)→11万1546円(改定後)
- 2016年度:12万5020円(改定前)→12万415円(改定後)
- 2017年度:13万401円(改定前)→12万8383円(改定後)
- 2018年度:12万8935円(改定前)→12万2545円(改定後)
- 2019年度:13万1592円(改定前)→12万5542円(改定後)
男性の平均年金月額の変動差(円)
- 2015年度:2374円減
- 2016年度:4605円減
- 2017年度:2018円減
- 2018年度:6390円減
- 2019年度:6049円減
女性の平均年金月額(円)
- 2015年度:3万721円(改定前)→3万3727円(改定後)
- 2016年度:2万8651円(改定前)→3万3845円(改定後)
- 2017年度:3万2989円(改定前)→3万7702円(改定後)
- 2018年度:3万4434円(改定前)→3万9499円(改定後)
- 2019年度:3万7159円(改定前)→4万2248円(改定後)
女性の平均年金月額の変動差(円)
- 2015年度:3006円増
- 2016年度:5194円増
- 2017年度:4713円増
- 2018年度:5065円増
- 2019年度:5089円増
1号と2号の変動差が3万円前後である一方、3号分割のみだと2000~6000円ほどという結果に。これらの金額をみて、「予想より少ない」という印象を受けた方もいるのではないでしょうか。
これは、分割の対象が「婚姻期間中の厚生年金部分」のみとなっているため。離婚のタイミングによっては、分割して得られる部分がどうしても少なくなってしまうのです。