さまざまな事情により、「夫との夫婦関係に終止符を打ちたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。

厚生労働省の「令和元年(2019)人口動態統計」によると、離婚をした夫婦は年間で20万8496組。こうみると、別々の道を進むことを選んだ夫婦の多さが感じられますね。

さて、離婚と切り離せないのが「お金」の問題でしょう。とりわけ妻の収入が夫より低い場合、離婚直後だけではなく、やがて訪れる老後の生活費についても慎重に考えておくことがたいせつとなります。

「これまで夫に尽くしてきたんだから、年金はきっちり分けてもらえるんでしょ」なんて声もありますが、実際のところ、どうなのでしょうか。

今回は、「離婚と年金」、とりわけ「年金分割」にフォーカスしていきます。

「年金分割」とは?

離婚した場合、条件を満たした際に「年金分割」をすることができます。その制度は、「合意分割制度」と「3号分割制度」の2つ。日本年金機構の「離婚時の年金分割」をもとに、詳しくみていきましょう。

合意分割制度

離婚などをした時に、夫婦どちらか一方の請求で、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を夫婦間で分割することができます。下記が条件です。

  • 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること(共済組合などの組合員である期間を含む)
  • 夫婦双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと(合意がまとまらない場合は、夫婦の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることが可能)
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと
  • 合意分割の請求をすると、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれているときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされる。

3号分割制度

2008年5月1日以後に離婚などをした、「国民年金第3号被保険者」だった人は、2008年4月1日以後の婚姻期間中のみ分割請求できる制度です。

相手の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、元夫婦間で分割することができます。婚姻期間のしばりと1人のみで請求の手続きができる点が特徴です。以下が条件となっています。

  • 婚姻期間中に2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること(共済組合などの組合員である期間を含む)
  • 請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)を経過していないこと(分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象期間を年金額の基礎としている場合、「3号分割」請求は認められない)

参考:日本年金機構「離婚時の年金分割