企業規模も「格差」の一因

ここまでご紹介した「退職金の相場」は、退職給付金が「もらえる場合」の給付額です。つまり、退職金が「もらえないケース」もあります。

「退職金制度を設けるかどうか」は、各企業の裁量に任されています。さきほどご紹介した退職金の相場は、あくまでも「勤務先に退職金制度があった場合」ということになるわけです。

ここからは、企業の「退職金制度」をめぐる事情について深掘りしていきたいと思います。

「退職給付制度」がある企業はどれくらい?

退職給付金の受け取り方には、「退職一時金制度」と「退職年金制度」があります。先述の厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況(※)」によると、この制度がある企業は80.5%です。

では、残りの19.5%にあたる「退職給付制度がない企業」について、その割合を企業規模別にみると…

企業規模別「退職給付制度がない企業」

  • 1,000人以上:7.7%
  • 300~999人:8.2%
  • 100~299人:15.1%
  • 30~99人:22.4%

「企業規模が小さいほど、退職給付制度がない割合が高い」ことが分かります。

※調査対象:日本標準産業分類(2013年10月改定)に基づく16大産業(製造業や情報通信業、金融業など)に該当する産業で、常用労働者30人以上を雇用する民営企業(医療法人、社会福祉法人、各種協同組合などの会社組織以外の法人を含む)となっています。ここからさらに、産業、企業規模別に層化して無作為に抽出した企業が調査対象です。調査客体数は6405、有効回答数は4127、有効回答率は64.4%となっています。

次では、中小企業についてもみていきましょう。

中小企業の退職給付制度の実態

先のデータでは、企業規模が小さいほど、退職給付制度が「ない」企業が多くなっています。
さらに「中小企業」にフォーカスを当ててみると・・・

東京都産業労働局が、従業員10~299人の東京都内の中小企業を対象に実施した「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」(2020年)では、回答企業1407社中、退職金制度がある企業は927社(65.9%)。

また、退職金制度そのものが「ない」と回答した企業は20.9%。大手企業を含む先述の厚生労働省の調査結果と比較しても、「ない」割合は高いことがわかります。

ちなみに、「退職金制度がある」という回答の内訳をみると

  • 退職一時金のみ:666社(71.8%)
  • 退職一時金と退職年金の併用:216社(23.3%)
  • 退職年金のみ:45社(4.9%)

となっています。