退職が視野に入る世代にとって重要なのが、2019年に話題となった「老後資金2,000万円」問題をはじめとする老後のための貯蓄のことでしょう。「退職金があるから老後の2,000万円は心配することはない」という意見もありますが、本当に大丈夫なのでしょうか。実は決して楽観できない理由もあるようです。

老後資金2,000万円問題を振り返る

まず、老後資金2,000万円はどのような数字なのでしょうか。金融庁のレポート(※1)では、高齢夫婦2人世帯を例として、老後の生活費の不足を報じています。夫婦二人は夫が標準的な給与で40年間働いていたサラリーマン、妻は専業主婦という設定で、老後の主な収入は公的年金となります。

金融庁レポートで提示された高齢無職夫婦2人世帯の家計収支(毎月)

  • 夫:老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金を受給
  • 妻:老齢基礎年金を受給
  • 毎月の収入(二人分・主に公的年金):20万9,198円
  • 毎月の支出:26万3,718円
  • 毎月の赤字額:5万4,520円

毎月の収支差(赤字・約5万5,000円)は貯蓄を取り崩すことになるため、以下のような資金が必要になることが分かります。

  • 20年間:5万5,000円×20年(×12カ月)=1,320万円
  • 30年間:5万5,000円×30年(×12カ月)=1,980万円

老後2,000万円問題は、このような数字でした。しかも支出については、介護費用や住宅リフォーム費用、老人ホームへの入所費用など、特別な支出を含んでいない点に注意が必要だといえます。