地方で離れて暮らす両親が高齢になってきたが、自分たちは都心で自宅を購入し生活が確立しているため、将来実家に住むことは考えていない。すると両親が亡くなった後、実家を相続しても誰も住む人がいない。

これが現在急速に増えている「空き家問題」の一原因です。

この空き家問題に頭を抱えているのは、住民が減少して困る地方自治体だけはありません。私たちの懐にダイレクトな影響を与える問題にもなりうるのです。

というのも実家の土地・家屋を相続すると、住んでいなくても毎年固定資産税や修繕費といった費用が発生します。
つまり財産を相続したはずなのに、それが「思わぬ出費」につながってしまうかもしれません。

そこで今回は、実家を相続した場合の

  • 相続税や固定資産税、修繕費など、空き家の維持に必要となるお金
  • 補助金を活用して実家を上手に賃貸する方法
  • 親が元気なうちに自宅を資金化する方法

などについて、お伝えしていきたいと思います。

相続税が課税されるのは全体の約8%

実家の相続を考えた際に、まず気になるのは相続税だと思いますが、実は非課税で済む場合が大半を占めます。
国税庁が発表した『令和元年(2019年)分 相続税の申告事績の概要』によると、相続税の課税対象となったのは被相続人(=死亡者)全体の約8.3%となっています。つまり多くのケースでは相続税は課税されません。

これは

  •  相続税の基礎控除額が3,000万円+(600万円×法定相続人の数)まであること(例:法定相続人が1人の場合→3,600万円まで、法定相続人が2人の場合→4,200万円までであれば、相続税がかからない)
  • 小規模な宅地(約100坪以下)で一定の要件を満たしていれば、その宅地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があること

によって、自宅以外に大きな資産がなければ相続税の課税対象とはなりにくいからです。

空き家の維持にもお金がかかる!

ただ、相続税がかからないからといって安易に実家を相続すると、後で思わぬ落とし穴があるため注意が必要です。

相続をして土地建物の所有者になれば、毎年固定資産税が課税されるようになります。また、家は人が住まなくなると急激に「傷み」始め、その修繕費がバカになりません。

実際にそこに住み生活していればまだしも、空き家にしているのに毎年固定資産税を支払い、更に修繕費まで支出するのは、経済的にも精神的にも結構な負担になります。

そのため将来全く住む予定がないのであれば、実家の相続は慎重に検討する必要があるのです。

では、「実家の相続」で損をしないための、2つの方法についてみていきましょう。

実家相続で損しない方法 その1「自治体の”空き家バンク”を活用」

定期的に支払わなければならない固定資産税や修繕費を捻出するために、相続した実家を貸家にして家賃収入を得ようと考える方もいらっしゃいます。

ただ住民の少ない地方都市の場合、いざ借り手を探そうと思ってもなかなか見つからない場合もあります。そこで活用したいのが、地方自治体が行っている「空き家バンク」や「空き家・空き地活用事業費補助金」の制度。

「空き家バンク」とは空き家の賃貸・売却を希望する人からの情報を地方自治体のホームページなどに掲載し、空き家を借りたい、購入したいという人とマッチングさせるサービスです。

また青森県弘前市のように、空き家バンク利用者を対象に補助金を支給している自治体も多くあります(※)。

移住者で空き家を賃借する人には家賃の3年間分を補助するといったかなり有利な内容のものもあるため、街の不動産屋さんに依頼するよりも早く借り手が見つかることもあるようです。

(※)弘前市『空き家・空き地利活用事業費補助金』

実家相続で損しない方法 その2「リバースモーゲージの活用」

将来売却予定なら、検討の余地あり

固定資産税や修繕費の負担を最小限に抑えるため、実家を相続したら早急に売却してしまいたいと考えても、地方都市の場合なかなか買い手が見つからないことがあります。

そこで検討したいのが、リバースモーゲージを活用した実家の資金化です。

両親が住んだまま、実家を資金化できる

リバースモーゲージとは、「現在住んでいる自宅の土地や建物を担保にして、一括または年金形式で金融機関からお金を借りる」金融商品です。その特徴は、

  • 契約後も契約者は自宅に住み続けることができる
  • 契約者(両親のどちらかまたは両方)が亡くなるまでは元本の返済が不要で、毎月の返済は利息のみ
  • 元本の返済は契約者の死亡時に担保である自宅を売却などして行う(売却せず他の資金での返済も可)

という点。

このリバースモーゲージを活用すれば、親は老後の生活資金を豊かにしたり、借りた資金を生前贈与で子どもや孫たちに分け与えたりすることができ、将来の相続人である子どもたちは実家の処分に頭を悩ます必要が無くなるという仕組みができあがります。

家族間の話し合いで将来実家の売却が決まっているのであれば、利用の検討をしてみてはいかがでしょうか。

さいごに

ここまでは将来的に「実家には住まない」ことを前提にお話しをしてきましたが、コロナ禍によるリモートワークの普及などによって、地方移住が急速に見直されつつあります。

現在抱えている住宅ローンを精算して、地方の実家で暮らすようにすれば、ローンの支払に充てていた資金を老後に回すことも可能になるかもしれません。

相続とコロナ禍をきっかけに、一度生活拠点を見直してみるのも良いと思います。

参考資料

アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP)/JSA認定ソムリエ/元歌舞伎役者 杉浦 直樹