また、これらの数値は、有価証券報告書を提出している上場企業のみが対象ですから、中小・零細などを中心とした非上場企業を含めると、リーマンショック時に匹敵するレベルであることは容易に想像できましょう。

既に2021年の実施予定はリーマンショック時を上回る

さらに、2021年1月以降に早期・希望退職を実施することを明らかにした上場企業は、12月29日現在で既に18社に達したことが判明しています。このうち、募集人数等の詳細が判明しているのは13社で合計3,360人。

この年末時点において既に翌年の早期・希望退職の実施が判明している社数は、リーマンショック時を上回るハイペースです(2008年末時点では10社でした)。これも前掲した通り上場企業のみが対象ですから、実質的にはかなりの社数が既に実施を決めていると考えられます。

早期・希望退職制度は経営者にも従業員にもメリットあり?

このように、早期・希望退職の実施は、やや不適切な表現かもしれませんが、ある種のトレンド、ブームとなっているのです。そして、早期・希望退職の実施が急増してる最大の要因は、言うまでもなく、コロナ禍による業績悪化です。

一般論として、売上高の見通しが立たない、あるいは、大幅減少が見込まれる時、当座のコスト削減で対応できなければ、固定費削減は必要不可欠です。業種によって差はありますが、最大の固定費は人件費ですから、経営者が人員削減に踏み切るのは理解できます。

一方で、「雇用維持」は経営者のノルマでもあります。経営者失格という烙印を押されずに、業績立て直しのために人員削減を行うならば、早期・希望退職の実施は都合の良い制度なのかもしれません。