米中二強時代、ASEANをめぐるリスクも

そして、外交の世界でも大きく難題がある。今日の国際社会では、国家間のパワーバランスは大きく変化し、既に米国一強の時代は終わり、米中二強の時代に突入している。

また、トランプ政権にも象徴されるように、世界では自国優先主義的な流れやナショナリズムが強くなっており、イスラエルやサウジアラビアなどトランプ大統領の敗北を内心残念がっている国々も少なくない。

こういった世界の潮流の中で、バイデン政権の多様性や国際協調がどこまで機能するかは全くの未知数だろう。

たとえば、日本も重視するインド太平洋構想において、東南アジアはインド洋と太平洋の真ん中にあり極めて重要な地域だが、ラオスやカンボジア、ミャンマーなどは中国との経済的結束が強い。

ミャンマーは少数民族ロヒンギャの人権弾圧について沈黙を守り続け、カンボジアではフンセン政権が野党を解党するなどして事実上の独裁体制となっている。また、タイではプラユット政権や王政を批判する市民の激しい抗議デモが続いているが、市民への人権侵害も問題になっている。

人権問題を重視するバイデン政権がこういった問題でASEAN各国に追求していくと、米国とASEANの間で亀裂が生じ、中国がそういった隙をついてASEANへの接近をさらに加速化させる可能性もある。

以上のように、バイデン政権は内政と外交の両局面で難しい課題に直面する可能性がある。コロナ禍もあり、世界はさらに混沌とした時代に直面しようとしている。

和田 大樹