老後資金はどのくらい必要なのか
毎月6万円の赤字分を貯金の取り崩しによって補う場合、単純に計算すると1年間で6万円×12カ月=72万円、20年間で1,440万円が必要です。60歳で退職した無職の夫婦が100歳まで生きる場合は約3,000万円の老後資金が必要になる計算です。
一方、冒頭で紹介した「令和2年版厚生労働白書」によると、家計の収入を公的年金や恩給のみに頼る世帯の割合は2018年時点で5割を切っており、公的年金以外の方法でも収入を得ている世帯が過半数を突破しています。日本人は投資を好まないとしばしばいわれていますが、前述した70代以上の貯蓄現在高の内訳をみると、約350万円の有価証券を保有していることがわかります。人生100年時代を迎える今、70代以降も資産運用を続けていく必要性がより高まっているといえるでしょう。
健康寿命は70歳前半
「老後もできるだけ長く働きたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。総務省の「2019年(令和元年)労働力調査」によると全就業者数は6,724万人で、うち65歳以上の就業者数は892万人に上ります。
一方、厚生労働省によると、2016年時点の健康寿命は男性で72.14歳、女性で74.79歳です。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。70歳を過ぎると、働きたくても思うように働けないケースが増えるでしょう。
認知症リスクも見逃せません。厚生労働省の資料によると、2018年時点の認知症有病率は70~74歳で3.8%ですが、75~79歳では10.4%に上昇します。80~85歳の5人に1人は認知症を発症している状況です。判断能力が衰える前に、自分の資産をどう管理していくのかについて考えておく必要があるでしょう。
リバースモーゲージの利用も
自分の死後に自宅を残す必要がない場合は、自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」を利用する手もあります。子どもが独立していてそれぞれマイホームを持っている場合などでは、賢く利用することで不足した老後資金を補いやすくなるでしょう。
「リバースモーゲージ」では、本人の死亡時に自宅を売却するなどして借金を返済するため、自宅を残したい人には不向きです。借入方法には「年金型」や「一括融資型」などの種類があり、お金を借りながら自宅に住み続けたり小さな住宅に引っ越すための資金にしたりといった使い方ができます。「介護施設に入るが、自宅に住む人がいない」といった場合にも有効です。
70代中盤以降は十分に働けなくなったり、通院や介護のための出費が新たに発生したりするおそれがあります。「若いうちに資産形成を始めて、できるだけ長く続ける」「退職前に長く働くためのスキルを身につけておく」などの対策が必要です。日頃から健康的な食生活や運動を心がけるなどして、できるだけ健康寿命を延ばすことも重要なポイントになるでしょう。
参考
「令和2年版厚生労働白書」厚生労働省
「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)」厚生労働省
「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省
「労働力調査(基本集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の要約」総務省統計局
「健康寿命とは、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間」公益財団法人生命保険文化センター
「認知症施策の総合的な推進について」厚生労働省
「リバースモーゲージで豊かなセカンドライフをはじめませんか?」三井住友銀行
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
LIMO編集部