親と同居をする意外な理由

なぜ親と同居する成人が増加しているのでしょうか。「自立や自由を尊重するアメリカ人」というイメージは過去のモノとなっているのでしょうか。

もちろん、不景気や失業などの影響もあります。しかしそれだけではないようです。例えば、2007~2009年のグレート・リセッションの状況を調べた米Pew Research Centerの2015年の調査結果(※2)によれば、大学生を除く18~34歳の成人の失業率が2010年は12.4%のところ、自立している人は69%。ところが経済が回復した2015年、この年齢グループの失業率は7.7%と大幅減少にも関わらず、自立している人は67%と減っているのです。つまり、失業率や景気の回復後も、親と同居を続ける人が増えているということです。

「新興成人期」(18~29歳)を研究する、米クラーク大学心理学部のジェフリー・アーネット博士は、親と同居の理由の1つとして、「教育の延長(高学歴化)」を指摘しています。

同氏はリサーチ情報サイトTHE CONVERSATION(※3)において、経済構造が製造業から情報技術主体に移行し、より高い知識と学位を求め、学生を続ける20代が増えていると述べています。年々高騰する学費を考えれば、親元にいられるのであれば経済的には得策なのでしょう。

また別の理由として、心理学サイトPsychology Today(※4)に寄稿した心理学者のベラ・デパウロ博士は、親子の距離感が近くなっていることを指摘します。過去世代にみられた「世代のギャップ」が縮まり、「共通」した価値観を持ち、一緒にいることを楽しむ親子が増えているようだといいます。確かに友達感覚の親子は増えているようです。