投資家は死屍累々

投資家は、大損を被りました。特に国債を空売りした投機家は悲惨でした。市場に出回っている国債はほとんど残っていないので、国債を買い戻そうにも何円で買い戻せるか見当もつかなかったのです。最悪の場合には、財務省に頭を下げて額面より高い値段で売ってもらう必要があるかもしれません。

投資や投機は自己責任ですから、投資家や投機家の倒産が続出しても、それは政府の知ったことではありません。しかし、何事にも例外はあります。

多くの銀行が倒産すると金融システムが崩壊しかねないのです。そこで政府は、銀行の倒産を防ぐ手立てを考えました。それが財務大臣の言う「残骸の整理」です。

政府は銀行から額面100円の国債を受け取って代金30円を支払いましたが、それに続いて現金70円を渡して銀行の株券を受け取りました。銀行に増資をさせてそれを政府が引き受けることによって、売却損によって減ってしまった銀行の自己資本70円を穴埋めするためです。

発行された株券は特殊なもので、所有者は株主総会での議決権は持っておらず、銀行が将来利益を稼いだ時は70円で買い戻すという条件の付いたものでした。「無議決権優先株」という名前だそうです。

こうして、国債価格も円相場も何事もなかったように元どおりになり、銀行も元どおりの健全性を取り戻したため、金融危機も起こりませんでした。一部の金融関係者を除き、人々は何事もなかったように日常生活を続けたのでした。

経済評論家からは、「日本政府の借金が円建てで良かった。借金がドル建てだったら、ドル高円安になったことで破産が確定していたことだろう」という声が聞かれました。外国通貨建ての借金が通貨危機によって返済できなくなって破産した国や企業は過去に多数ありましたからね。

本稿は、以上です。なお、本稿はシミュレーションであって筆者の予想ではありません。また、本稿の内容は筆者の個人的な考えであり、筆者の属する組織その他の考えではありません。ご了承ください。

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塚崎 公義