憧れの年収1000万円。国税庁のデータ(※1)によると、1年を通じて勤務した給与所得者 (約5255万人)のうち、年収1000万円以上を稼ぐサラリーマンはわずか5%。
年収が高いと、生活ゆとりがあり、貯蓄もしっかりできそうだというイメージがある反面、税金や社会保険などの「出ていくお金」が多いというジレンマもあります。
では、年収1000万円超の世帯の貯蓄はどのくらいあるのでしょうか。総務省の「家計調査報告」より、2人以上の勤労世帯の平均貯蓄額をみていきます。
世帯収入ゾーン別にみた、平均貯蓄額ってどれくらい?
世帯年収900万円~1000万円未満
…平均貯蓄額1612万円
世帯年収1000万円~1250万円未満
…平均貯蓄額2036万円
世帯年収1250万円~1500万円未満
…平均貯蓄額2460万円
世帯年収1500万円以上未満
…平均貯蓄額3673万円
平均額が2000万円~3000万円という、年収にふさわしい平均貯蓄額であることは分かります。しかし、このような平均貯蓄額の一方で、貯蓄額がゼロという世帯も存在するのです。
次では、年収1000万円以上で、金融資産がゼロ、もしくは100万円未満の世帯についてみていきます。
【参考】
※1 「令和元年分民間給与実態統計調査」国税庁
「家計調査報告(2019年) / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年間収入階級別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高」総務省統計局
年収1000万円超えても「金融資産が100万円未満」の世帯はどのくらい?
金融広報中央委員会が公表している、令和元年(2019年)の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査」の結果をみていきましょう。
同調査では、金融資産を「非保有」または「100万円以下」に該当する世帯の割合は以下のようになりました。
収入はない
金融資産非保有…37.0%、金融資産保有額 100万円未満…0.0%
年収300万円未満世帯
金融資産非保有…39.1%、金融資産保有額 100万円未満…7.4%
年収300万~500万円未満世帯
金融資産非保有…20.9%、金融資産保有額 100万円未満…6.1%
年収500万~750万円未満世帯
金融資産非保有…13.5%、金融資産保有額 100万円未満…5.3%
年収750万~1000万円未満世帯
金融資産非保有…9.7%、金融資産保有額 100万円未満…5.4%
年収1000万~1200万円未満世帯
金融資産非保有…10.3%、金融資産保有額 100万円未満…3.4%
年収1200万円以上世帯
金融資産非保有…5.1%、金融資産保有額 100万円未満…1.5%
無回答
金融資産非保有…44.0%、金融資産保有額 100万円未満…2.1%
金融資産を「非保有」または「100万円以下」に該当する世帯が、どの年収区分においても確認できますが、注目は年収1,000万円超の世帯です。金融資産を「持たない/100万円未満」の世帯が一定割合、存在しています。
次ではその要因についてみていきます。
「税・社保負担が多い」年収1000万円世帯
では、年収1000万円世帯の税負担はどのくらいになるのでしょうか。
日本の所得税は累進課税(所得が高いほど、税率が上がるしくみ)となっています。また、住民税や社会保険も、所得額が多くなるほど、高くなります。
モデルケースとして「専業主婦の妻と、中学生の子どもを扶養する、40代の男性」が、年収1000万円だった場合、所得税・住民税、社会保険料を差し引いた最終的な手取りは730万円前後となります。
細かい計算はさておき、健康保険・雇用保険・厚生年金保険の社会保険料は、通常年収の15%程度になることが知られています。さらに所得税と住民税を差し引くと、手取り額は約733万円となります。
これを月給に換算すると約61万円。
「1000万円」を単純に12カ月で割った場合、1カ月当たり80万円を超えるはずなのに…。年収1000万円の手取り月給が約61万円だということに、ちょっとびっくりした人もいるかもしれませんね。
子育て関連・補助制度の所得制限
さて、多くの世帯で負担が大きいのが教育費関連といえるでしょう。
年収1000万円超世帯の場合、児童手当や高校無償化制度の所得制限を超えてしまいます。中学卒業までの子どもを養育している世帯を対象に支給される児童手当(※2)も、一般的に1人あたり月額1万円~1万5000円の支給が、所得制限で一律5000円に。2020年4月からスタートした「私立高校授業料の実質無料化制度」(※3)についても、支援を受けられる世帯年収の目安は910万円未満のため対象外となります。
教育費のほかに「もしもの備え」がたいせつ
年収も高く、企業での地位も一定の高さにあるような場合、我が子に最適な学びの場を求めて、小学校・中学校受験などを早い時期から考え始めるご家庭も多いでしょう。しかし、塾通いや私立学校への進学で、一気に家計が火の車になることも。
教育費を含めた子どもへのお金については、進学関連だけでなく、将来に向けてのライフプランをしっかり立てていく必要があります。
年収1000万円世帯におすすめ!「効果の高い」節約・節税法
収入が多くても、周りの目を気にして「いい暮らし」にこだわり、家や車などの持ち物にお金をかけているような場合は要注意。そのままだと、ゆとりある生活は難しくなりそうです。
税負担の大きさや支出の多さ、所得制限などの点を考えると、支出を把握するなど、基本的な部分を押さえていくことがたいせつだといえます。「ちょっと贅沢に」という背伸びをしていると、暮らしの立て直しが難しくなります。
固定費の見直し
高所得世帯ほど住居費や保険関連の固定費が膨らみやすいものでしょう。固定費を適正に保つことで、浮いた資金を貯蓄に充てることができます。
まず、契約している生命保険や医療保険については、保障内容の重複や過剰な加入となっていないか確認をしましょう。保険の見直しには時間がかかりますが、一度手をかけることで必要な保障を絞り込むことができ、管理もしやすくなります。
サブスク活用
最近では自動車、家電など、さまざまなサブスクリプションサービスが登場しています。
たとえば自動車の場合、購入すれば初期費用、駐車場代、保険代、車検費用など維持費も高額になりますが、カーシェアやカーリースの利用であれば負担も少なくて済みます。
また、年に1回程度しか使わない高額な品物についても、サブスクで利用してみると、購入する価値があるかどうかや購入するグレードを判断することもできます。
節税法
納税額が多いからこそ、高収入世帯では「節税」が大きな意味を持ち、家計管理のカギとなります。iDeCo、NISA、つみたてNISAなどの税制優遇制度の活用を検討することもおススメします。
さいごに
年収が高くても、社会保険料や税金によって手取り額は大きく減ってしまいます。その一方で教育費関連の各制度の所得制限を超えてしまうことも。「年収1000万円世帯」はこうしたジレンマを抱えることが多いゾーンといってもよいかもしれません。
「いったん上げてしまった生活レベルを下げることは難しい…」
その結果、収入は高くても、家計は常に火の車!という世帯も珍しくありません。税や社会保険制度の仕組みを知り、節税や節約を意識していくことで、確実な貯蓄につなげていきたいものです。
たいせつなのは、稼ぎの額より、正しい家計管理と身の丈にあった生活、ということなのかもしれません。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
【参考】
※1「令和元年分民間給与実態統計調査」国税庁
「家計調査報告(貯蓄・負債編)‐2019年(令和元年)平均結果‐(二人以上の世帯)」総務省統計局
令和元年「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査」金融広報中央委員会
※2「児童手当制度のご案内」内閣府
※3「高等学校等就学支援金制度」文部科学省
LIMO編集部