「うちは財産なんてないから、相続争いなんて無関係」と考えている方、実は家庭裁判所で遺産分割の調停を受けたケースのうち、33.8%が資産(自宅不動産を含む)1,000万円以下、76.8%が5,000万円以下ということをご存じでしたか?(令和元年年司法統計)
自宅の売却代金を含めれば、遺産総額が5,000万円程度になることは珍しくありません。つまり相続争いは誰にでも起こる問題なのです。
ではなぜ資産が少なくても相続争いが起こってしまうのか?
それは遺産分割によって「あいつはズルいという不公平感」が生まれてしまうことに原因があります。
今回はそんな相続争いが起こる原因と仕組みを解説し、「争続」を防止する方法もお伝えしてまいります。
遺産の分割方法は3種類
遺産の分割方法については、民法上3つの方法が定められています。
現物分割(げんぶつぶんかつ)
遺産を「そのまま」現物で分ける
自宅の土地建物は妻に、別荘地のリゾートマンションは長女に、預貯金と株などの有価証券は長男に・・・といったように、遺産自体を「現物」で振り分ける方法です。
- メリット・・・不動産の売却などの手間がないためスピーディーで簡単
- デメリット・・・法定相続分にキッチリと分けることが難しい
換価分割(かんかぶんかつ)
遺産を売却し、そのお金を分ける
現物分割では法定相続分通りに分けることが難しいため、「遺産を売却=換価」した上で、その売却代金を分け合う方法も用意されています。
- メリット・・・1円単位までキッチリと分割することができる
- デメリット・・・自宅など、「売却したくない資産」がある場合は使えない。また売却には必要経費や譲渡取得税などがかかる
代償分割(だいしょうぶんかつ)
遺産を相続した相続人が、自分の資産で他の相続人に相当分を支払う
遺産である自宅(仮に1,200万円相当とする)を長男が単独で相続する代わりに、次男と三男にそれぞれ法定相続分以上の長男の財産(金銭など、この場合は400万円以上)を遺産の代わりとして支払う、といった方法です。
- メリット・・・売却できない遺産でも平等に相続することができる
- デメリット・・・遺産を単独相続した相続人(上記の場合長男)に資産がない場合、他の相続人に支払うことができない