そうした人に1割負担で済ませたり1000円の補助金を渡したりするのは望ましいことではありません。せっかくマイナンバーを導入したのですから、誰が資産家であるかを把握して、文字通り「金のない人」だけを優遇するようにすべきでしょうね。

感染症の予防と治療は無料に

以上、普通の病気の治療に関して記してきましたが、感染症については別の考慮が必要です。感染症については、本来行われるべきことが行われていない場合もあり得るからです。

感染症に罹患すると本人は1万円分の苦痛を味わい、他人に感染させて他人に6万円分の苦痛を味わわせるとします。合計7万円分の苦痛ですね。治療費が6万円で自己負担が2割であれば、本人は治療を受けないでしょうから、社会全体として7万円の損失を被ることになります。

そうした場合には、税金で治療を受けさせることが望ましいでしょう。7万円分の苦痛が6万円で消えるのですから。

あるいは、予防接種を受けると罹患する確率が2割から1割に減るとします。予防接種が6千円の2割負担であれば、人々は接種を受けないでしょうが、税金で負担すれば接種を受けるでしょう。税金で6千円を負担することによって、社会全体が期待値として7千円の被害が防げるのであれば、補助すべきでしょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義