みなさんは毎月の支出額をしっかり把握できているでしょうか。将来に向けた生活を考えるとき、支出に注目すると計画を立てやすくなります。総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)二人以上の世帯―2019年(令和元年)平均結果の概要―」により年齢別の支出状況を見てみましょう。
70代・80代の生活費はいくらくらい?
年齢階級別の二人以上世帯の消費支出
~29歳:22万円
30~39歳:28万6,000円
40~49歳:33万3,000円
50~59歳:35万4,000円
60~69歳:29万3,000円
70~74歳:28万3,000円
75~79歳:23万1,000円
80~84歳:22万6,000円
85歳~:21万9,000円
(※住宅ローンの返済額等については含まれない)
もっとも支出が多いのは50代で、教育費等の様々な支出が多い年代ともいえるでしょう。退職する年代である60代以降に消費支出は減少していきますが、80代は20代と同程度の支出になっていることが分かります。
次に、消費支出で多くを占める食費に注目してみます。
年齢別の食費
~29歳:5万2,000円
30~39歳:6万9,000円
40~49歳:8万円
50~59歳:8万1,000円
60~69歳:7万8,000円
70~74歳:7万4,000円
75~79歳:6万8,000円
80~84歳:6万6,000円
85歳~:6万3,000円
世帯人員別の食費
2人:6万7,000円
3人:7万7,000円
4人:8万4,000円
5人:9万1,000円
6人:10万3,000円
年代別で食費がもっとも高くなるのは、やはり50代でした。そして年齢が上がって高齢世代になっても、2人世帯の平均(6万7,000円)と同程度の費用が掛かっていることが分かります。
また、食費の中でお弁当やおにぎり、お惣菜、冷凍食品などの「調理食品」に関するデータもあります。40代から80代まで1万1,000円前後の支出となっています。食費が一番高い50代でも1万2,000円で、ほぼ横並びです。意外かもしれませんが、20代は他の世代よりも低く8,000円、30~39歳で9,000円となっています。中高年世帯では、調理済み食品は毎月、同程度の金額分の利用があるようです。
夫婦二人世帯の生活費の目安はいくら?
生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》」では、
- 夫婦2人の世帯で老後必要になる最低日常生活費・・・月額22.1万円
- 夫婦2人の世帯でゆとりある老後を送るための生活費・・・月額36.1万円
このような金額が目安となっています。「最低日常生活費」で生活できたとしても、生活費は1年で264万円、10年で2,640万円、20年で5,280万円、30年で7,920万円となります。年齢とともに生活費は減少していく可能性もありますが、最初のデータで、80代でも20代と同じくらいの生活費(約22万円)となりました。また、高齢になるほど医療費や介護費が必要となる可能性があり、支出の削減には限度があることを念頭に置いておきましょう。
現在の資産状況や住宅ローンの残額などの負債状況を確認し、老後に必要だと思われるお金を早めに知っておくべきだといえます。
老後の年金受給額はどれくらい?
上記のような支出が想定されると、公的年金額が気になります。将来の年金額について、厚生労働省の「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2018年)から受給額を見ていきましょう。
まず、年金の加入内容は人それぞれです。就職して厚生年金に加入すると、国民年金にも同時加入となります(第1号被保険者)。厚生年金の保険料は給与により段階的に定められ、給与実績に応じた保険料を天引きで支払い、保険料に応じた年金が支給されます。
一方の国民年金は、無職の人や専業主婦(主夫)・自営業の人が加入し、保険料も全国民一律です。そのため厚生年金と比較して受給額が少なくなっています。それらの点を踏まえて年金額を見ていきましょう。
国民年金の年齢別平均年金月額
- 60歳~64歳・・・4万1,790円
- 65歳~69歳・・・5万6,831円
- 70歳~74歳・・・5万6,429円
- 75歳~79歳・・・5万5,972円
- 80歳~84歳・・・5万6,336円
- 85歳~89歳・・・5万4,708円
- 90歳以上・・・4万7,803円
(※65 歳未満は、受給を前倒しする「繰上げ支給」選択者の金額)
厚生年金保険(第1号)の年齢別老齢年金の平均月額
- 60歳~64歳・・・7万9,135円
- 65歳~69歳・・・14万4,521円
- 70歳~74歳・・・14万6,813円
- 75歳~79歳・・・15万3,816円
- 80歳~84歳・・・16万1,663円
- 85歳~89歳・・・16万4,831円
- 90歳以上・・・16万367円
(※65 歳未満の厚生年金保険(第1号)の受給権者は移行措置の受給額。特別支給の老齢厚生年金について定額部分の支給開始年齢の引上げによる報酬比例部分のみの受給)
まず、国民年金は40年間保険料を支払うと満額受給者となり、65歳以降に年額で約78万円(月額約6万5,000円)を受け取ることができます。未納期間等があると減額されるため、おおよそ5万6,000円程度になっていることが分かります。
厚生年金については給与(標準報酬月額)の階層と加入月数により年金額が決まります。定年退職後の世代は14万円台です。ただし、この金額は現在受給している世代の年金額となります。現役時代の給与の多寡により年金額も変わっていくことになります。
「老後2,000万円問題」、どうして2,000万円?
2019年に話題となった「老後2,000万円問題」で老後資金の不足を指摘した金融審議会の報告書によると、高齢夫婦(夫65歳以上妻60歳以上)二人世帯をモデルケースとして生活費の赤字額を集計しています。
その高齢夫婦世帯の毎月の収入(主に年金収入)が約21万円に対し、支出が約26万円、その差として毎月の赤字額が約5.5万円と推計されました。つまり、老後20年、30年の間に
- 20年間:5万5,000円×20年=1,320万円
- 30年間:5万5,000円×30年=1,980万円
老後には約2,000万円が足りなくなるという見込みです。モデル世帯は共働きの設定ではなく、また、持ち家が前提となっています。世帯ごとに収支は異なりますので、年金受給額について「ねんきん定期便」などを活用して早めに調べておきましょう。
さいごに
個人、世帯により退職金も年金額もそれぞれです。金融審議会の報告では、高齢夫婦のモデル世帯の収入は月額約21万円と見込まれています。最初にご紹介した消費支出では、70代でも23万円から28万円の範囲にあり、この収入では厳しい見込みであるといえるでしょう。
また、厚生年金も給与実績や加入期間により個人差があるため、定年前に年金額を確認したり、家計の見直しをすすめるなど、現状把握をしておきましょう。安定した生活のためには、早期からの資金準備や生活設計が重要となりそうです。税制優遇の多い個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や非課税制度を利用可能な「つみたてNISA」などを活用して老後の生活資金を早期から設計してみてはいかがでしょうか。
参考
「家計調査報告(家計収支編)二人以上の世帯―2019年(令和元年)平均結果の概要―」総務省統計局
「令和元年度 生活保障に関する調査≪速報版≫」生命保険文化センター
「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省
市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」金融審議会
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
LIMO編集部