以前の記事で紹介した通り、3月、4月の相場下落時点で、30代が投資に前向きに動いたことが、家計調査の分析から明らかになっています。
昨年の老後資金2000万円問題などで資産形成への必要性が言及されたことが背景にあるほかに、20-30代特有のセグメントの特性があるように思います。
20代、30代は投資に対して相対的にポジティブ
下のグラフを見てください。これは2019年に行ったサラリーマン1万人アンケート中から、「投資という言葉に対するイメージ」を聞いたものです。
この結果からは、年代別に投資に対する見方に違いがあることがわかります。
投資に対するイメージを8つの選択肢から選んでもらい、「明るい」、「楽しい」、「儲け」、「前向き」の4つをポジティブなイメージ、「ギャンブル」、「損失」、「怖い」をネガティブなイメージ、そして「リスク」の3つに分けてグラフ化しています。
「リスク」とみる人の比率は年代に関係なく30%強を維持していますが、「ネガティブ」とみる人の比率は40歳を超えると大きくなる傾向が読み取れます。
逆に40歳未満は投資を「ポジティブ」にとらえている人が多いことがわかります。40歳以上は1980年代、90年代のバブル崩壊からの株価下落時期に社会人生活をスタートさせたサラリーマンです。
その人たちは株式市場の下落に対する強い警戒感が残っていることは否めないでしょう。それが、「投資という言葉」に対するイメージにも反映されていると思います。
2050年に向けて息の長い資産形成を
ところで、現在の20代、30代が65歳以上になるのが2050年、60年代です。この時には、65歳以上が総人口に占める比率、いわゆる高齢化率は、今よりもかなり高くなっています。
国立社会保障・人口問題研究所の2015年国勢調査を基にした予測では、2020年の高齢化率は28.9%ですが、2050年には38.0%、2060年には38.1%となると予測しています。
これを65歳以上の高齢者1人を支える20-64歳の数として計算すると、2020年で1.89人に対して、50年には1.27人、60年には1.25人と、一段と支えられる側の厳しさが募ることになります。
そのためにも、2050年には高齢者になっていく現在の20代、30代は息の長い資産形成を行う必要があります。単に金融相場の動向に左右されるような目線ではなく、自身の将来を想定した長期投資が不可欠だといえるでしょう。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史