コロナ禍ですべてが通常通りに行かず、我慢の連続、先の見えない長引く不安、感染の恐怖、多かれ少なかれ世界中のほとんどの人が、自分では気が付かないうちに精神的にかなり疲労が溜まっているようです。人によっては鬱になったり、不眠症になったり、怒りっぽくなったりと、様々な形で現れています。

特に、いつもより怒りやすくなったという人が増えているようです。今まで気にならなかったことに妙に頭にきたり、カッとして言わなくてもいいことを口走って相手を傷つけてしまったり、喧嘩になったり…。今回はそんな厄介な怒り、アンガーについてハーバード大学医学部の心理学助教授デビッド・ロスマリン博士のお話をもとに考えます。

怒りが犯罪へ

ここ数年、「アンガーマネジメント」という言葉が浸透しています。コロナ禍以前からストレスの多い社会で、ただ単に「短気な人」「キレやすい人」というレベルでは収まらないような人が増えているからではないでしょうか。

そういう人達をアメリカでは「アンガープロブレム」「アンガーイシュー」を抱えているといいます。こういう人達は、ちょっとしたことですぐに攻撃的になり、言葉や態度で他人の心を傷つけてしまいます。それだけではなく、他人や家族に暴力を振るったり、モノを壊したりと犯罪に繋がるケースも増えています。同時に自分自身の心も深く傷つけてしまうこともあり、「アンガーマネジメント」、つまり怒りの感情をコントロールするためのセラピーやカウンセリングの必要性が注目されるようになっています。

特に今のアメリカでは、コロナ禍のフラストレーションに加え、歴史的にもっとも注目を集めた大統領選挙という政治的な要素も影響しています。アンガープロブレムを悪化させる人が多く、銃社会のアメリカでは緊張感が高まっています。