『空の巣(からのす)症候群』って言葉、ご存じですか?
子どもが独立した後の主婦をおそう、空虚感から生じる、無気力・無関心・自信喪失・寂寥感などの症状を指します。時期的に女性の更年期障害と重なることも多い、一過性の抑うつ症に似た状態です。
具体的には、無気力、無関心、自信の喪失、寂しさ、不安感、食欲不振、不眠など、色々な形で現れます。子どもの就職、結婚など、子育ての節目節目のタイミング発症することが多いため、「母親の燃え尽き症候群」という別名も。
秋も深まり、もうすぐ冬。特に受験生を抱える家庭では、いよいよラストスパート。体調管理や塾の送迎など、お子さんのサポートに忙しくしているという女性は多いでしょう。お子さんが巣立った後に、この『空の巣症候群』にならないよう、子ども以外の生きがいを見つけていかなくちゃ、と考えている人もいらっしゃるかもしれませんね。
ただ、なかにはお子さんがいなくなる寂しさよりも何よりも、再び始まる『夫と2人の生活』のほうに思うところがある人も…。今回は、お子さんの巣立ちと同時に、夫婦2人の生活が待っているという3人の女性が、春からの生活についてお話してくれました。
「ちょっと楽しみ」Aさんのケース
夫と高校3年生の息子の3人暮らしだというAさんは、「夫と2人の生活が楽しみ」と言います。理由は「今まで子どもがいるのが当たり前だったけど、夫とまた2人だけになって、どういう生活になるのかなあと考えるとワクワクするから」
そもそもAさん夫婦は、近所でも仲良し夫婦で有名。とはいえ、いつもベタベタと一緒にいるわけではなく、夫は夫、AさんにはBさんの趣味や付き合いがあり、お互いの時間が合う時は一緒に行動するというスタンスで生活しています。子育てに関しても、「できるほうがやる」というルールだったそう。
「お互いに感謝の気持ちは忘れないですね。夫が働いてくれるから、私と息子は生活できる。夫も、私が家のことをやるから安心して働きに行けると言ってくれます。あと、別々に行動することが多い分、普段からよく話をしますね。お互い相手の話はきちんと聞きます。こんな感じなので、子どもが巣立って夫婦2人きりになっちゃうからといって、特に寂しくなったり、不安になったりはないですね」と話すAさん。
やはり、夫婦円満な家庭は、家族の形が変わっても特に不安に思うところはないようです。
「夫と二人きりの生活なんてゾッとする…」Bさんのケース
でも世の中、Aさんのような円満なご夫婦ばかりとは限りません。
Bさんは夫と大学受験を控えた息子さんの3人暮らし。息子の第一志望は県外の大学。もし合格すれば、家を出て一人暮らしをすることになります。Aさんは、「息子が出て行った後の夫婦だけの生活が、今から不安でたまらない」とこぼします。
結婚当初から多忙だったBさんの夫。共働きだった新婚当初は家事分担にも協力的でしたが、妊娠・出産のためにBさんが仕事を辞めてしまうと、家事も育児もすっかりBさん任せの状態になってしまいました。加えて、「仕事で疲れている」を理由に、Bさんが会話を盛り上げようと日常で起きた様々なことを話しても生返事。まだまだ若いうちは、そんな夫の態度に怒りもしましたが、年月を重ねるうちにBさんは夫にだんだん期待をしなくなってしまいました。
夫婦の会話の中で、唯一、夫が反応するのは、子どもの成績や部活の戦績、進学先などのことだけ。このため、気が付けば、Bさんが夫と会話する内容は、もっぱら息子のことばかりという状態に…。
「今は、子ども進学のことでいろいろ話さなくてはいけないことがあるので話はしますが、本格的に2人になったら何を話せばいいのか…。無言のまま同じ空間に2人きり。考えただけで息が詰まりそうで、ゾッとします。もういっそのこと、夫が家にいる時間は、パートにでも出てしまおうかしら?いずれにせよ、家庭内別居状態になることは目に見えていますね」
「”卒婚”計画中!」Cさんのケース
次はBさんと同じく、夫と2人の生活は不安…と感じていたというCさん。しかし、彼女はその不安を解消すべく、動き出そうとしていました。
「今すぐ、というわけではないのですが、夫を残して家を出る計画を進めてます」
と、高校3年生の末娘を持つCさんはにこやかに語ります。
「家出とかではないですよ(笑)。娘が進学する予定の大学は、教養課程と専門課程のキャンパスが別。教養課程の間は自宅から通えるのですが、専門課程に進級したら片道3時間はかかる距離。これは部屋を借りないと無理でしょう。
そのタイミングで、「娘のサポートをする」という名目で一緒に家を出てルームシェアしようかと思って…。娘も賛成してくれてます」
Cさん夫婦の子どもは3人。上の2人はもう就職しており、末娘と卒業後の進路について話しているときに「あなたがいなくなったら、お父さんと2人になるのよね…」とため息をついたところ、娘さんのほうから「じゃあ、家を出てお母さんと私で一緒に住もうよ。」と提案があったのだとか。
「ああ、そう、これだと思って。夫も娘の1人暮らしは心配してましたし、私も一緒なら安心ですよね。まだ夫には相談していませんが、娘と一緒に、時間をかけて説得していこうと思います。まあ、娘の卒業と同時に、私も『卒婚』をする、という感じでしょうか?」
さいごに
いちばん理想的なのは、Aさんのような仲良し夫婦なのかもしれません。とはいえ、長い長い年月をかけて積み上げてきた夫婦の歴史によっては、BさんやCさんのように、夫との2人の生活はちょっと厳しい…と感じる人がいるのもまた事実。
いつか必ずやってくる我が子の巣立ち。あなたとパートナーの「未来予想図」、描くことができますか?
【参考】
【空の巣症候群】デジタル大辞泉 小学館
「空の巣症候群とは」大阪市立大学大学院医学研究科講師・岩崎進一
犬養 のぞみ