定年を迎えた後に生活が困窮してしまう「老後破産」。実は決して他人事ではないようです。たとえ定年後に向けてたくわえをしっかりしていても、退職金を十分にもらったとしても、ふとしたきっかけで老後破産はやってきます。

「明日は我が身」ともいえる老後破産の現状を、実例をもとにご紹介していきましょう。果たして、老後破産を確実に回避するためのヒントは、そこに隠されているのでしょうか…?

病気で人生設計が大幅に狂い…

65歳の男性、Dさんは、現役時代とある優良企業に勤めていました。

「給料も平均よりも多くもらっていて、現役の頃は多少の贅沢をしても貯金ができるくらいの収入は得ていました」

そんなDさんが家を購入したのは40歳のとき。少々無理をして大きな家を買ったDさん、当時の貯金はすべて頭金に充て、35年ローンを組んだそうです。

「とにかく収入に余裕がありましたので、貯金はまた貯めればいい、繰り上げ返済もじゅうぶん可能だ、という算段だったんです」

しかし、予期せぬ事態がDさんを襲います。50代でDさんは病魔におかされ、仕事も思うようにできず、早期退職を余儀なくされたのです。

「退職金もあったし、保険金も出たのですが、それらはすべて子供たちの学費に消えました。さらに自分もまだまだ通院しなければいけません。住宅ローンの繰り上げ返済なんて、とてもじゃないけれど無理でした」