世の中には、「専業主婦であること」に負い目を感じている女性が少なからずいるようです。自ら望んで専業主婦になった、事情があってやむを得ず専業主婦をしている…。現状に至るまでの過程はさまざまではありますが、いったいどうしてそのような気持ちになってしまったのでしょうか?

その理由を探るべく、今回は3人の専業主婦の女性にお話をうかがいました。

「誰のおかげで食えているんだ」の呪縛

最初にお話をうかがったのは50代のFさん。Fさんは、夫からのたっての願いで専業主婦になったそうです。

「主人はいわゆる古いタイプの人間で…。女は働きに出ず、家事と子育てに専念してほしい、と言われたんです。私もあまり深く考えず、『働かなくていいなら楽だし、まぁいいか』と思っていました」

夫の頑張りのおかげで、Fさんは別段働かずとも余裕のある暮らしが送れ、貯金もできたそう。Fさんも不自由のない生活ができることに、感謝の気持ちを抱いています。こう聞くと、専業主婦であることに何ら問題はなさそうですが…Fさんは表情を曇らせます。

「夫婦ゲンカのたびに、主人が『誰のおかげでメシを食えるんだ』と言うんです。それを言われると…何も言い返せないですよね」

その言葉を聞きたくないFさん、必然的に夫の顔色をうかがうようになってしまいます。

「もし私が働いていて、自分一人でも食べていける収入があれば…主人と対等に話せていたんだと思います。でも今さら離婚しても、一人で生きてはいけない。かといって今から職を探そうにも、どこも雇ってくれないですよね…。専業主婦であるがゆえに、私は主人の顔色を見て生きていかなければならないんです」

洋服一枚買うのも、ためらいがちに…

続いてご紹介するのは40代のCさん。Cさんは、結婚した当初は働いていましたが、妊娠を機に退職。

「専業主婦になって、『好きな物を買えない』不自由さを痛感しています」

化粧品はドラッグストアで安いものを、洋服一枚買うのにも何日も悩んで夫にお伺いを立ててから。白髪染めはセルフ、極力美容院には行かないように…。

「別に浪費をしたいわけではないんです。でも、やっぱり自分が働いていた時は、自分の収入の中からお小遣いを決めて、いろいろ買ったりランチしたりできていたので…」

夫は「別に好きに使っていいよ」と言ってくれるそうですが、やはり「自分で稼いだお金ではない」という引け目から、なかなか自分の物は買えない…というCさん。

「こんな思いはコリゴリなので、子供がある程度大きくなったら仕事に復帰するつもりです」

自分は社会の役に立っていない

最後にご紹介するのは40代の専業主婦、Hさん。Hさんが専業主婦になったきっかけは、介護。

「自分の母が病気で寝たきりになり、介護が必要になったので我が家に引き取ることにしました。私はパートを辞めて母の面倒を見ています」

施設に入れずに自宅で介護をする決断をしたのは他でもないHさん。夫もHさんに全面的に協力してくれているそうですが…。

「去年の夏、同窓会があったので出席しました。すると、出席していた女子はほとんどみんな仕事をしていて…なんだか生き生きとして見えたんです」

看護師として働いている子、営業一筋で頑張っている子、夢をかなえてお店を開いた子…。そんな仲間に囲まれて「私は専業主婦だから」と話すのは、とてもみじめだった、とHさんは振り返ります。

「私だけ、何ひとつ社会の役に立っていない、何の生産性もなく生きている…という劣等感に襲われて…。私だけ、世間から取り残されたような気持ちにもなりましたね」

同窓会以来、Hさんは「自分の選択は本当に正しかったのか」と自問自答する日々だと言います。

なぜ、専業主婦であることに引け目を感じてしまうのか?

専業主婦だって立派な仕事。「家庭をきりもりするのって、とても大変だ」…というのは主婦の皆さんならよくわかっていらっしゃると思います。それに、兼業主婦から見れば、「働かなくても生活できるなんてうらやましい!」という気持ちになる人もいるはず。

では、どうして今回ご紹介した3人の女性のように「専業主婦であることに引け目を感じる」人が多いのでしょうか?

その主たる理由は、「どれだけ頑張っても評価されない、成長を実感できない」ことではないでしょうか。

働いていれば周囲から評価される機会も多いし、自分の頑張りは「給料」という形で反映されます。しかし、専業主婦にはそれがありません。それが「自分は世間には必要ない存在なのではないか」という気持ちにつながり、負い目になっているのではないでしょうか。

まとめ

筆者が幼いころは、既婚女性といえば「専業主婦」であることの方がまだまだ多かった気がします。しかし、最近では、「女性の社会進出」が当たり前となり、「女性が輝く社会づくり」のかけ声の下、働く女性を応援しようという機運が高まっています。

しかし「女性が働きやすい」社会がどんどん構築されつつあるからこそ、「働かないこと」に罪悪感を覚える専業主婦も増えているような気がします。

このままさらに「女性が輝く社会づくり」が進むと、ますます専業主婦に罪悪感を覚える人が増えるのでは…と危惧するのはいささか大げさでしょうか。

大中 千景