春の訪れを感じる3月は、新年度に向けて家計や将来の生活設計を見直す人も多い時期です。特に老後生活の柱となる「年金」について、「実際にどれくらい受け取れるのか」と気になっている人も多いのではないでしょうか。

日本の公的年金制度は、すべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」の2階建て構造となっています。両方を受給する人も多い一方で、年金額には個人差があります。

ニュースでは年金額の改定や制度改正が報じられていますが、公的年金の仕組みや実際の受給水準を正しく理解している人は意外と多くありません。

本記事では、国民年金と厚生年金の基本から、2026年度の年金額改定の内容、さらに私的年金制度の見直しまでを整理し、老後資金を考えるうえで押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

1. 日本の公的年金制度の仕組み

日本の公的年金制度は、「すべての人が加入する国民年金」と「会社員や公務員などが加入する厚生年金」の2階建て構造になっています。

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日本の公的年金制度の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 【第1階部分:国民年金(基礎年金)】

  • 対象:20歳以上60歳未満の全国民
  • 保険料:2025年度は月額1万7510円(一律)
  • 受給額:40年間保険料を納めると、満額で月額6万9308円(2025年度基準)

1.2 【第2階部分:厚生年金】

  • 対象:会社員、公務員など
  • 保険料・年金額:現役時代の収入や加入期間によって決まる(個人差あり)
  • 将来受給する年金:国民年金に加え、厚生年金も上乗せして受け取る

さらに老後の備えとして、公的年金に加えて次のような私的年金制度も活用できます。

  • 企業年金
  • iDeCo(個人型確定拠出年金) など

2. 【2026年度の年金額改定】基礎年金と厚生年金のモデルケースは月額いくら?

2026年度、4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)が+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が+2.0%です。

厚生労働省が公表している年金額の一例は以下のとおりです。

2026年度(4月分~)の年金額2/4

2026年度(4月分~)の年金額

出所:厚生労働省「令和8年4月分からの年金額等について」

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分 ※2)

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(前年度比+1300円)となります。
※2 平均的な収入(賞与込みで月額換算45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。

国民年金のみを受給する場合、40年間(480カ月)すべて保険料を納付した満額(※3)であっても、月額は7万円程度にとどまります。

単身であれば生活の柱になりますが、ゆとりある生活費をまかなう水準とは言いにくいでしょう。

仮に受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給」(※4)を活用すると、最大84%の増額となり、満額ベースで月額はおよそ13万円台になります。

増額効果は大きいものの、受給開始までの生活費をどう確保するかという課題も生じます。

※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から支給される満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給は、年金の受給開始を66歳から75歳までの間で遅らせることができる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳で開始すると最大で84%増額されます。

もっとも、実際の受給額は加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。

示した金額はあくまで標準的なモデルケース。自身の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で見込み額を確認し、働き方や資産形成とあわせて老後の収支を考えていきましょう。

3. 国民年金+厚生年金「月15万円以上」もらっている人はどのくらいいる?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金+厚生年金を受け取っている人の平均月額は約15万円です。

では、平均以上の年金を受け取っている人はどのくらいいるのでしょうか。

【年金一覧表】厚生年金+国民年金「男女別」受給月額3/4

厚生年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

同資料によると、厚生年金の受給権者のうち、月額15万円以上を受け取っている人は全体の約49.8%を占めています。受給者のおよそ半数が「月15万円以上」の年金を受け取っている計算です。

もっとも、ここで示されているのは支給額(額面)であり、実際の振込額はこれより少なくなります。

年金からは、所得税や住民税、介護保険料、後期高齢者医療保険料などが天引きされるため、手取り額は額面より数千円から1万円以上減るのが一般的です。

また、男女間の差も見逃せません。平均月額は男性が約17万円であるのに対し、女性は約11万円と開きがあります。就業期間や賃金水準の違いが、将来の受給額に反映されている構図です。

4. 「私的年金」が見直しに?押さえておきたい改正ポイント

2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。

今回の改正では、公的年金制度を中心に、私たちの働き方や老後設計に関わる重要な見直しが盛り込まれています。

具体的には、「年収106万円の壁」撤廃に向けた社会保険の適用拡大や、在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げ、遺族年金制度の見直しなどが柱です。

これらは、公的年金の受け取り方や働き続ける選択に影響する内容といえるでしょう。

また、こうした公的年金の改正とあわせて、私的年金である iDeCo(個人型確定拠出年金) や 企業型DC(企業型確定拠出年金) にも見直しが加えられることになりました。

4.1 iDeCoの加入可能年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)

iDeCoについては、加入できる年齢の上限が引き上げられます。

これまでの加入対象は、原則として国民年金の被保険者で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない人に限られていました。

改正後は、働き方にかかわらず「70歳未満」まで加入可能となる予定です。

すでに定年を迎えた後や、再雇用・フリーランスとして働く人でも、年金を受け取り始めていなければ、iDeCoを活用した老後資産形成を継続しやすくなります。

4.2 企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)

企業型DCでは、加入者本人が掛金を上乗せする「マッチング拠出」に関する制限が緩和されます。

これまで、本人が拠出できる額は事業主掛金の範囲内に制限されていましたが、この上限が撤廃される見通しです。

今後は、企業型DCの拠出限度額の枠を、より柔軟に使えるようになり、資産形成の幅が広がります。

4.3 企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)

企業年金については、運営状況の情報開示が強化されます。

厚生労働省が企業年金の情報をとりまとめて公表することで、他社との比較や分析が可能になります。

加入者が自社の企業年金の状況を客観的に把握しやすくなり、制度への理解や納得感の向上につながると考えられます。

5. 公的年金と私的年金を組み合わせた老後資金の準備を

公的年金の水準や改定内容を知ることで、老後の収支イメージはより具体的になりますが、実際の生活は年金額だけで決まるわけではありません。

働き方や受給開始時期、私的年金の活用など、選択の積み重ねが将来の安心度を左右します。

また、平均額やモデルケースはあくまで目安です。大切なのは、ご自身の加入記録や見込み額を確認し、「自分の場合はどうか」を把握することです。

そのうえで、不足が見込まれる部分をどう補うかを考えていけば、漠然とした不安は少しずつ具体的な対策へと変わっていきます。

制度改正が続く今だからこそ、情報に振り回されるのではなく、仕組みを理解し、自分のライフプランに引き寄せて考える姿勢が重要です。

公的年金を土台に、私的年金や資産形成も組み合わせながら、納得できる老後設計を描いていきましょう。

参考資料