これまでの米国を中心とするハブ・アンド・スポーク型の安全保障体制では中国の海洋覇権は止められないとの声も上がるなか、米国にはクアッド会議を軸としてインド太平洋地域で多国間安全保障協力を深めていきたい狙いがある。

多国間安全保障協力が進むと韓国の孤立が深まる?

自由で開かれたインド太平洋構想に興味を示しているのは、日米豪印の4カ国だけではない。

ベトナムやインドネシアだけでなく、南シナ海問題で中国と対立するフィリピンやマレーシア、ニュージーランド、そして南太平洋やインド洋に海外領土を持つフランスや英国、最近ではドイツのメルケル首相も強い関心を抱いている。

各国とも中国との経済関係があることから、インド太平洋構想に基づく多国間安全保障協力がどこまで、どのように進んでいくかは不透明であるが、同協力の発展によってASEANの一体性が揺らぐとの見方もある。

ASEANではラオスやカンボジア、ミャンマーなどは中国と深い経済関係にあり、ベトナムやフィリピンのような立場は避けたいのが本音だ。米中対立はASEANを二分させるのだろうか。

また、今後米国の同盟国である韓国がどうクアッドに関与するかが注目される。

現在、米韓関係は非常に冷え込み、トランプ政権の韓国を見る目も冷めている。このままの状態で多国間安全保障協力なるものが進めば、韓国がいっそう孤立することは明白だ。

和田 大樹