筆者が5月に執筆した記事『コロナ不況、ボーナス「ゼロ」は夏より冬が正念場。今から備えをすべき?』でも指摘した通り、ボーナス「ゼロ」は冬季賞与で本格化するでしょう。

特に、ANAが属する航空業界を始めとする運輸産業、ホテルを含めた旅行産業(既に一部は発表済み)、飲食産業などでこの動きが加速すると予想されます。

しかし今回のANAの人件費削減で注目すべきは、何と言っても基本給の削減です。これはリーマンショック時にも見られたことですが、相当に深刻な状況でないと基本給カットには踏み込めません。

実質的な業績連動型報酬であるボーナスと違い、基本給削減を実際に行うには、労働局の監査基準があるため労使合意が絶対条件となります。また、ANAの事例で言えば、今般の基本給カット対象は一般社員(組合員)であり、管理職など非組合員には既に適用されている模様です。

一連の報道ではカット率には触れていませんが、リーマンショック時に大手自動車メーカーの管理職がほぼ一律▲5%削減された事例を勘案すると、一般社員では概ね▲3%程度、管理職は▲5~▲8%程度と筆者は推察します。

2021年前半は手取り分が大幅減少へ

また、報道内容にある2020年の年収▲3割減の要因はほとんどが賞与分と考えられ、この基本給カットの影響が本格的に出てくるのは来年、2021年からになります。

そこで見落としがちなのが、地方税(住民税)の支払いです。住民税は前年の所得分に基づいて計算されますが、通常の場合、(新たな住民税は)6月から給与天引きという形で反映されます。つまり、来年2021年の前半は、まだ通常レベルだった2019年の所得に基づいた住民税となるわけです。

一方で、給与は減少するわけですから、手取り分が大きく減ることは不可避です。賞与が大幅減となった2020年の所得に基づく6月以降は幾分か楽になりますが、それでも、厳しい収支に変わりはないでしょう。