金融緩和で世の中に資金が出回るから株高になる?

金融市場の関係者の中には、「世の中に大量の資金が出回っているから、溢れた資金が株式に向かっているのだ」と考えている人も多いようですが、おそらくそれは違います。

ゼロ金利下で金融が緩和されたからといって、企業が設備投資を増やすとは考えにくく、したがって銀行借り入れを増やすとも考えにくいので、銀行から世の中に資金が出て行くことは考えにくいのです。

たしかに、新型コロナ以降は銀行貸出が増え、マネーストックが増えていますが、これは資金繰りに不安を感じている企業が銀行から借りた資金を銀行預金の形で持っている、というものでしょう。株式投資に回っているとは考えにくいですね。

考えられる可能性としては、「株価が上がりそうだから借金して株を買おう」という投資家が借金をすることで世の中に資金が出回る、ということですが、そうであれば「世の中に資金がジャブジャブに溢れているから、それが株式市場に流れ込んでいる」ということではありませんよね。

まあ、美人投票の世界では、人々の信じた噂が誤りであったとしても、人々が噂を信じれば株価が動くわけで、「あなたが信じている理屈は誤っていますよ」と指摘してあげることに特に意味があるわけではありませんが(笑)。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義