繰下げ受給者の割合はなんと1.5%
先ほどの計算の通り、必ずしも繰下げ受給をした方が良いというわけではありませんが、人生100年時代と言われている昨今では繰下げ受給の方がおトクになる人も多いと思われます。
実際、厚生労働省の算出によると、2019年に65歳を迎えた人の平均余命は、男性の場合84.8歳、女性の場合89.6歳になります。仮に平均寿命まで生きたとすると、男性の場合204万円、女性の場合567万円トクをします(65歳からもらえる年金受給額は月15万円の場合)。
しかしながら、繰下げ受給の利用率はたったの1.5%しかありません。
繰上げ受給者の割合は19.7%
逆に年金を65歳より前からもらう繰上げ受給をしている人が19.7%も存在しています。繰上げ受給をすると、早いうちから年金をもらえるのですが、月々の金額は減るので、長生きすればするほど損してしまいます。
まとめにかえて
繰下げ受給せずに繰上げ受給している人がたくさんいるということは、言い換えると、人生100年時代と言われている状況に真っ向から逆らっていることと同義だと思います。繰上げ受給は長生きすればするほど損しますからね。
ではなぜこのような状況になってしまっているのでしょうか?
大きな理由は2つあると思います。
一つがそもそも繰下げ受給のメリットを知らないことです。私たちはお金のことを学ぶ機会は少ないため、そもそも制度を知らないという人もいると思います。
二つ目の理由が、繰下げ受給するだけの資産を持っていないことです。受給年齢を70歳まで引き下げた場合、仮に60歳に退職しているのであれば、70歳までの10年間は無収入で暮らさなくてはいけません。それだけのお金がなくて繰り下げたくても繰り下げられないという人もいるかと思います。
お金と上手に付き合っていくためには、何をすればいいでしょうか?
抽象的にはなりますが、お金の知識をちゃんと身につけて、いい制度があればそれを活用できるくらいの資産を持っておくことがとても大切だと思います。
参考
「老齢基礎年金の繰下げ受給」日本年金機構
「国民年金及び厚生年金に係る 財政の現況及び見通し ー2019(令和元)年財政検証結果 ー」厚生労働省
「令和元年簡易生命表の概況」厚生労働省
「繰下げ制度の柔軟化」厚生労働省 年金局
安田 優